「全く、ルークの態度には苛々するわ」

ルークと共に飛ばされたタタル渓谷で乗った辻馬車の中で、ティアはダアトにいた頃の知己の姉弟と再会していた。
弟のベルナルドはダアトのある村の村長の次男で、去年マルクト人の女性と結婚して、双子の姉のイレーネを連れてセントビナー近郊の村落に移り住んでいたが、 その日は民間人ながら剣が使えたのを生かして、薬師で第七音譜術士のイレーネのタタル渓谷付近への薬草の材料採取に、ベルナルドも同行していたのだという。

ティアは二人とは友人というほど親密ではなかったが、ベルナルドとは神託の盾騎士団の戦闘で何度も共に戦ったことがあった。
久しぶりに出会った知己への懐かしさに加えて、タタル渓谷に飛ばされてからずっとルークと二人きりで、 ルークの態度に苛々させられても相談する相手もいなかったため、ティアはルークが眠っているのを幸い、ルークについての愚痴を吐露していた。

ルークは無知で傲慢で、礼儀知らずで無神経で、人を気遣うことも知らない。
ルークの態度には呆れる、苛々させられる、とても安心して背中を預けられる相手とは思えない。
おかげで面倒をみてやっている自分は苦労しているのに、ルークの態度には感謝も敬意も感じられなくて腹が立つ。
これだから貴族のお坊ちゃんは、信じられないほど世間知らずで子供っぽくて、貴族ってみんなこうなのかしら、と。

きっとベルナルドとイレーネは同意してくれると思っていた。

特にベルナルドは、若いながら一時は病で倒れた父の村長業務を兄と共に代わって務めていたこともあり、 民間人ではあるが何度も神託の騎士団の戦闘に参加して戦っていたから、世間も戦いの厳しさも良く知っている。
ティアと共に戦った時も、譜術士で後衛のティアを護り、叱咤激励に不満も言わずに耐えて、戦闘や旅の苦労を煩く愚痴ることもなく、 その時のティアの気分もベルナルドへの想いも、今ルークとの旅や戦いで感じている不快なものとは反対なものばかりだった。

だから二人は、特にベルナルドは、世間知らずで戦いの厳しさを知らないルークには自分と同じように呆れるだろう。
そんなルークを姉や教師のように叱咤激励し、世間や戦いの厳しさを教えて、苦労しながら面倒を見てやっていた自分には、同情と称賛を向けてくれるだろう。

そして、以前のように自分と共に戦い、自分を護って、自分と一緒に来てくれるだろうと期待していた。

しかし、ベルナルドとイレーネが呆れたのは、苛々したのは、同情したのは、全てティアの想像とは反対の方だった。







呆れは甘えの露呈、推察は侮蔑の元







「俺にはそうは思えないし、逆にティアが並べているルーク様への不満や悪口は、ティアに、ティアのルーク様への態度にこそ当て嵌まると思うんだけど?」

ベルナルドはティアの期待とはまるで違う感想を言いながら、聞いているだけでも不快だと言わんばかりに顔を顰めた。
ティアの話を聞いている時から、そしてティアが一旦馬車を離れた時にルークと話していた時から、ベルナルドは何度もこんな表情をしていた。

しかしティアはルークに対しての不快感だと考えていた。
今も、どうしてルークが向けられるべき冷たい視線を自分に向けるのかと、心中に湧きあがるのは不満と悲哀ばかりだった。

「本当に気付かないの?ずっと誰を傷付けているのか、負担をかけているのか、気遣いが足りていないのか本当に分からないの?」

ティアの神経を疑うと言わんばかりに眉を寄せて見詰めてくる二人に、居心地の悪い心地になったティアは、 それを振り払おうとするように苛立った口調で分からないわ、はっきり言いなさい!とルークにしていたように叱りつけるように言った。

ベルナルドとイレーネは良く似た顔を見合わせ、同時にそっくりな仕草でまた溜息を吐くと、 ベルナルドが頭痛を堪えるように顰められた眉根を指で押しながら、苛立ちが籠った口調で説明を始めた。

「ルーク様の態度に不満をぶつけるのも、ティアの要望通りにしないのを悪くとるのも、 背中を預けられないとか戦いの厳しさを教えるとかなんとかも、ティアの行動もルーク様への態度も何もかもがだよ。 そもそもルーク様を戦わせたり自分を護らせたりしている時点で可笑しいんだよ」

「どうしてよ?世間知らずで甘えた剣術ごっこしかできないお坊ちゃんに、戦いの厳しさを教えてあげるのは」

「ティアさんはルーク様の教官でも教師でもないし、ルーク様は軍人でもティアさんが戦いを教える新兵でも生徒でもないのに、 どうしてティアさんがルーク様に戦いの厳しさとかなんとかを教えることを当然のように考えてるの、 どうしてルーク様を戦わせて、詠唱中は護ってとまで要求していられたの? まして背中を預けられる相手とは思えないとかなんとか、戦いに関してルーク様を蔑んで、 それを何の疑問も抱かずに当然のように思っていられたことの方が、私には疑問なのだけど・・・・・・」

常識を疑うと言わんばかりに眉を寄せて見詰めてくる二人に、より増した居心地の悪さに耐えかねたティアは、 それを振り払おうとするように、ルークとは違うベルナルドの過去の行動を、 ルークへの不快さとは違って心地よく感じていたベルナルドの自分への態度を声を荒げて並べ立てた。

「ベルナルドだって民間人だったけど、ダアトにいた頃に何度も私と一緒に戦っていたじゃない! ルークと違って、言われなくても私を護れていたし、叱咤激励にも応えていたし、 私はずっとあなたを背中を預けられる相手だと思って・・・・・・だからまた会えたのが、一緒に戦えるのが嬉しくて・・・・・・」

あの頃は言えなかったけれど、ティアは度々自分を護ってくれたベルナルドに仄かな恋心を抱いていた。
民間人でも弱音も吐かずに戦う姿は凛々しくて、頼りがいがあって、その姿を見たいがためにわざとユリアの譜歌を使って護られる機会を多くし、 騎士に護られる聖女のような心地に陶酔していた。

だからベルナルドとは違って頼りないルークには自分同様に苛々するだろうと思っていたし、 再会した時には知己に会った懐かしさ以上に、また共に戦い、護られ、あの聖女気分の陶酔を味わえると甘い期待に胸を躍らせていた。

しかしベルナルドは、ティアと戦うことも護ることも想像していなかったというように眼を見開き、 奇妙な物でも見るような色を浮かべてティアを見詰め、苛立ちを増した声で自分への勘違いを矯正していった。

「いや、それは軍役としてだろう? うちの村は神託の盾騎士団の領地にあって、村長には騎士団への軍役奉仕の義務が課せられていたから、 あの時は普段それを果たしていた父が病気で、兄は村内の別の問題の対応にあたっていたから、俺が父の代理として軍役を果たしていたんだよ。 民間人とはいえ軍役奉仕中は戦闘員だったから、戦うことも、叱咤に耐えることも、後衛の譜術士や音律士を護ることもしたさ。 でもルーク様はそういう軍役奉仕の契約なんて神託の盾騎士団と結んでないだろう? 俺も今はイレーネと一緒にマルクトに移住したから、もう神託の盾騎士団への軍役奉仕中でもないから、 もしティアが魔物に襲われたって、詠唱中に護ってと言われたって、昔のように戦ったりティアを護ったりはしないよ。 今の俺は、マルクトの民間人なんだから、他国の軍人と戦うとか護るとかそんな義務なんてないだろう? そもそもこれはダアトや神託の盾騎士団の問題じゃなく、ティアの個人の問題なんだから、 例え神託の騎士団への軍役奉仕中でも、騎士団の戦闘任務への参加ならともかく、ティアと戦ったりティアを護ったりなんて断っただろうけど」

「・・・・・・っでも、さっきはイレーネのことを護っていたじゃない! イレーネだって同じ譜術士で後衛で、あなたと軍役なんてない間柄なのに戦って護っていたのに、私のことはそうできないっていうの?」

ルークとティアが辻馬車に乗る前に、漆黒の翼かと叫んだ御者の声に驚いて外に出てきていた二人に魔物が襲ってきたことがあったが、 ベルナルドは即座に譜術士のイレーネの前に出て、後ろで詠唱するイレーネを護りながら戦っていた。

その光景を見たティアは、かつてベルナルドと共に戦っていた頃を思い出し、 ベルナルドに護られているイレーネに過去の自分を重ねて胸をときめかせていたのに、 イレーネは護るがティアは護らないというのは甘い陶酔を否定されるようなもので、 イレーネに向けるティアの眼差しは、まるで恋敵に向けるようなものになっていた。

「いやいや、イレーネのことは護ってたのにって・・・・・・イレーネは俺の実の姉だぞ? まあ今は護衛代貰ってるけど、大事な姉貴を護るならそりゃ無償でも個人問題でも助力するけど、他人と家族は違うだろう。 まあ、これが普通の旅人や誘拐被害者とかが困っているんだったら助力も吝かではないけれど、ルーク様の方はともかく、ティアはそういうのとも違うしな。 それに第七音譜術士といっても、ルーク様の稽古用の木刀より頑丈そうな鉄製の実戦用杖を持ってるなら、 ルーク様に詠唱中に護らせてまで譜術使わずに、自分が前衛に立ち続ければ良いんじゃないか」

「私も同行しているのが実戦経験があって実戦用の武器防具に身を固めて準備万端のベルナルドや傭兵ではなく、 実戦経験がなかったり武器を木刀くらいしか持たない人だったなら、 その人に護らせてまで譜術を使うよりも、この杖で前衛に立つか自力で詠唱時間を稼ぐかするわ。 ティアさんがルーク様に、姉が弟を叱るような態度をとるのも疑問だったけど、 まさか、ルーク様の姉でもなんでもないティアさんが姉のように振舞うことにも、何の疑問も抱いていなかったの? だから家族が優しくしたり気遣ったり、共に戦ったり危険から護るような態度を、ルーク様からされるのが当然のように思っていたの? 親密な幼馴染や親戚、友人や守り役なら、家族みたいな関係になることも一緒に旅立って背中を預け合うこともあるけど、 ティアさんが小用で馬車の外に出た時に、まだ起きていたルーク様から聞いたら、 ティアさんとルーク様は赤の他人で、しかもティアさんの襲撃で出会ったばかりで、譜歌で攻撃までされた加害者と被害者、 その上にティアさんの犯罪に巻き込まれてタタル渓谷に飛ばされて帰還の旅に同行することになったそうじゃない。 普通に出会った他人同士でもいきなり姉みたいな態度をとるのは疑問なのに、 加害者が被害者に姉みたいな態度をとることを、しかも高圧的に叱り付けたりすることを、 本当に、本当に何も疑問を抱いたことがなかったの・・・・・・?」

民間人の二人から戦い方を疑われ、ルークに抱いていたわがままな弟を厳しく叱責する姉のような気分を否定され、 ティアは屈辱に歯噛みしながら二人を、そして二人の横で眠っているルークを睨みつけた。
しかしそれでもまたベルナルドと一緒に戦える、また護ってもらえるという期待は手放せず、 別れた恋人に復縁を求めるような口調でベルナルドに、期待通りの聖女を護る騎士役を求めることは止められなかった。

「でも、今は私は護衛も仲間も他にいなくて、わがままで未熟なルークに背中を預けて旅をするなんて不安なのよ。 困っているなら助力するなら、前みたいに私と一緒に戦ってくれたっていいじゃない! 前みたいに、もう一度私と、私を・・・」

ベルナルドに護られながらユリアの譜歌を詠唱していた頃を思い返して、 騎士に護られる聖女の陶酔と共に抱いていた熱い想いをも胸に蘇らせながら、ティアは熱っぽい眼差しでベルナルドを見詰めた。

今のベルナルドには妻がいることは知っているが、 団員の噂でベルナルドの妻は軍人ではなく民間人で、護ってあげたくなるような雰囲気のたおやかなか美少女だと聞いていたティアは、 そんな苦労知らずの箱入りお嬢さんなんかよりも軍人として戦っている私の方がベルナルドに相応しいのにと悔しさを抱え、 まだベルナルドへの想いを胸の奥底で燻らせていて、再会とまた共に戦い護られる期待によって再燃していた。

そんなティアにとっては、自分と戦わない護らないというベルナルドが、身内であっても他の女と戦ったり護ったりしている光景は見ていて辛く、 私も同じように、いえ彼女よりも私の方をと、期待は熱を帯びるばかりで、ベルナルドがちっとも気付かない態度をとる度に胸が酷く傷付けられたように痛んでいた。

「前は、前みたいにって、じゃあ仮に前のようにティアと戦ったり護ったりするとして、ティアは何を代価に支払うんだ?」

「え?」

思ってもいないことを言われたという様子できょとんとするティアに、 ベルナルドは逆に戦いを要望するのに代価を思っていないような反応を返されたことに驚いて眼を瞬かせた。

「まあティアに、それもこの状況で雇われるなんて代価を提示して依頼されてもお断りだけど、 仮に雇われるとしても、代価は何を提示するつもりだったんだ? 他人に戦えとか護れとかいうなら、他の依頼でも労働でも物を買う時でもそうだけど、代価は支払うものだろう?」

「でも、今は非常事態なのよ。戦う力があれば、民間人だって子供だって戦うわ。そうしないと生きていけないもの。 戦いの厳しさを、世の中の常識を、ルークと違ってあなたなら知っているはずでしょう?」

「君にとって非常事態だからって他人にとってもそうとは限らないし、非常事態であっても戦闘員と非戦闘員が分かれることはあるんだけど、 まあそれはともかく、犯罪に巻き込まれたとかで護衛を必要とするような窮地に陥ってる人なら護るのは吝かではないけれど、 自分の責任で、それも犯罪を起して旅をしている人間を護るなんて高額でも御免だけど、無償で要求されたら尚更にお断りだよ」

ベルナルドもイレーネも被害者のならともかく加害者の護衛などと戦闘以外にも危険な上に気分の悪い仕事は何万ガルド積まれようと断るつもりだが、 二人が戦うことを受け入れて当然だと思っているような態度に加えて、代価なく戦って当然の態度とは、 一体ティアの中の戦いに対する認識というものはどうなっているのだろうと、本物のはずの軍服が偽物に思えるほどに疑わしかった。

「私もベルナルドに同行して戦ってもらう時には、採取した材料から作った薬を売った収入から代金を払っているし、 他人の傭兵を雇って戦ってもらう時にも、ちゃんと代金を払ってるけど。 そうやって払ったお金を生きるため、家族を生かすための費用にしているんだから、 危険で負担の大きい労働させられてお金を支払われないことが常識だったら、それこそ生きていけないわよ。 過度の無償賦役を課して領民を過労死や餓死させる悪徳領主じゃあるまいし、 生きるのは厳しいのに、更に生きていけなくなるほど厳しくしてどうするの。 生きるために戦うことがあるから、戦うことに代価の支払いがあるんじゃない。 大体戦うこと自体が死傷の危険があって、経験や装備が未熟だったらより危険になるってこと分かっているの? 実戦経験がなく稽古用の木刀で戦うなんて、実戦経験があり実戦用の武器で戦う軍人よりも更に苦労して危険で、戦いに厳しさが増すのよ?」

ベルナルドもイレーネもなんでこんなことを軍人に聞かなきゃならないんだろうと呆れた心地になったが、 襲撃の際に譜歌を、音律士なら知識を身につけるのはそれこそ義務に等しい武器を無知なまま悪用し、 ルークにも譜歌で攻撃した後なのに危害を加えるつもりはないと笑いながら言ったというくらいだから、 戦いに死傷の危険があることを共に戦う味方にも、攻撃している相手にも、 訓練用の人形に対するような感覚しかなく、死傷の危険など考えたことがないのかもしれないとも思っていた。
イレーネは譜歌も知らないで音律士になれるなど、薬師で言えば睡眠薬や麻酔の効果も危険性も知らずに薬師になるようなものだと、ティアが音律士になれたこと自体に不審を抱き、 ベルナルドはダアトで神託の盾騎士団兵が交わしていた雑談に、ティアが無知だとか実力が伴わないとかなんとか愚痴があったのを思い出して、 ティアは音律士に縁故で就いたか金で買いでもしたのかと勘繰っていた。

もしもベルナルドが軍役参加してティアとともに戦っていた時に、後方から攻撃力や危険性のある譜歌で友軍攻撃でも仕出かされていたらと想像し、 ベルナルドは寒気に震えるように肩を竦め、イレーネは先程ティアが睨んだよりもずっときつく、敵を見るような眼でティアを睨みつけた。

「でも、私は今まで戦ってきたわ! 私だって昔は今よりも未熟だったけれど、初戦の時は実戦経験だってなかったけれど、それでも弱音も吐かずに戦ってきたのよ!?」

「いやいやいや、君は正式な神託の盾騎士団の軍人だから雇用されて、戦った代価に給料貰っていただろう?無償じゃないじゃないか。 俺たちもルーク様も、君に雇用されて戦う代価や給料を貰っているわけじゃないんだぞ。 なんで金を貰って戦っている軍人の君が、金を払わずに戦うことを当たり前のように他人に、民間人に要求するんだい。 訓練や準備にしたって、リグレット師団長から家庭教師のように自宅に来てもらって半年の実地訓練を受けていたって噂の真偽を、 他の騎士団兵に聞かれて肯定したことがあったし、確かその後にはカンタビレ師団長の下で模擬戦とかの実地訓練を受けていたとも言ってたよな。 神託の盾騎士団へ正式に入って、実戦に臨んだのはその後だろう? ルーク様はそういう実戦を想定しての事前軍事訓練なしで屋敷での剣術稽古のみ、稽古用の木刀と普段着で、装備も物資もない状況での戦闘参加なんだぞ。 つまりは初戦の時のティアと比べても、ルーク様の方がティアより厳しい環境にある、それなのにこれまで戦っていたということだろう。 もちろん今も、総長に襲いかかった時に使ってもいたくらい実戦用の鉄製の杖を持ってて入団前の半年以上の訓練に加えて実戦経験のあるティアとルーク様とでは、 戦いに置ける環境には、戦いの厳しさには大差があるんだぞ。 仕事で訓練も積んで武器を含めた支給品を受けとって戦っていた軍人が、 それよりも訓練も装備も物資も何かも足りないずっと苛酷な環境で仕事でもなく戦っている相手が自分と同じようにできないのを見下すのか? しかもルーク様をその戦う状況にしたのはティア自身で、本来ならルーク様は戦う必要のない立場にいるのに? ティアは戦いを知ってはいても、知っている戦いは“ルーク様よりも整った良い環境”でのものであって、 今のルーク様が置かれている苛酷な環境での戦いじゃないってことが、 軍人の任務の戦いと犯罪に巻き込まれた被害者や民間人の戦いとの区別がついているのか? これほどにルーク様とティアには違いがあるのに、その違いを無視してティアはできたのにルーク様はできないとか、ティアはしているのにルーク様はできないとか、 そんな侮りを抱くなんて、物事を表面だけで判断しすぎ・・・・・・いや、表面だけ見ても違いがメチャメチャあからさまじゃないか」

ティアは14歳の時から、ユリアシティではヴァンから派遣されたリグレットに半年以上にも渡り家庭教師的に指導を受け、市の共有地を使って実地訓練も積んでいた。
更にダアトに上がってからはカンタビレの元で模擬戦中心の実地訓練を終えて、そうしてやっと神託の盾騎士団に正式に入団していた。

ヴァンやガイとの剣術稽古以外は譜業人形での稽古くらいだったルークと、始めて実戦に参加した新兵の時ですら半年以上もの “軍人になるため”“遠からず実戦に臨むため”の訓練を積み重ねていた正式な軍人のティアとでは、 実戦に至るまでの訓練や経験、特に対人戦闘訓練、更には支給品の有無に至るまで、幾多の大きな違いがあった。
ティアは訓練から物資まで準備万端でルークよりも整っている状態で戦いに臨んでいたが ルークの方は訓練から物資まで準備不足でティアよりも整っていない状態で戦う破目になっていた。

外見年齢とは違って7年分の記憶しか持たないことや、王命による軟禁で屋敷から出たことが一度もないこと以外にも、 訓練から物資に至るまで準備が足りない民間人と、訓練を積み物資支給がある軍人という差がルークとティアにはあり、 それを当たり前のように戦わせるティアの態度は、ティアの態度や言葉とは裏腹に、 戦いの厳しさをティアが度外視して、自分がルークよりずっと良い環境にいたことに自覚がなく、 準備が違えば戦闘の苛酷さも負担も危険も違うルークに自分と同じようにすることが当然のような傲慢な意識を浮き彫りにしていた。

背中を預けられる相手のベルナルドと、背中を預けられる相手ではないルーク。
辛くても立派に耐えきって戦ってきた厳しさを知る自分と、辛いからと愚痴ばかりで未熟で戦いも厳しさも知らないルーク。

そう見下していたルークとは違うと高く評価し憧れていたベルナルドから、ルークへの見下しも自分を比較しての心地よさも否定されたティアは、 わなわなと震えていたかと思うと目を潤ませ、唇を噛んで眉尻を下げ、何時か見た演劇の恋人に裏切られた哀しみに耐えるヒロインのような雰囲気を醸し出し始めた。

悲哀を称えた雰囲気を表情や眼差しに、そして声にも込めることで、 ベルナルドなら分かってくれる思っていたのに酷いと傷付いた心を推察させようと、期待しているように優しく気遣かわせようとした。

「私だって、好きで戦っているわけじゃないわ・・・・・・今だって・・・・・・。 ベルナルドも、騎士団の軍人じゃなかったけど戦っていたじゃない、 ルークにも、あなたがしていたのと同じように戦わせることがそんなに悪いはずがないでしょう?」

「だからそれは軍役奉仕としてであって、村長の義務を父の代わりに果たしていたと言っただろう。 その代わり村長には租税を免除された保有地を与えられたりもしていたから、義務ばかりを課せられていたわけじゃないぞ。 日数が決まっていたから事前に準備していたし、装備自体が契約に含まれているから装備もちゃんと用意したし、 もし着の身着のまま、普段着に稽古用の木刀で軍役に行ったら逆にちゃんと装備を整えて来いと騎士団から駄目出しされるって。 でも今はマルクトの一民間人の俺たちにも、もちろんキムラスカ人でかつ被害者のルーク様にも、ティアはそんな契約も代価の引き換えもしてないしできないだろう」

ベルナルドの村では、村長には軍役を含めて多数の義務があったが、同時に多数の権利も与えられていた。
一方的に義務のみを課されていたわけではなく、逆に一方的に権利のみを享受できるわけでもなかった。

ベルナルドも戦うことは怖かったし、好きで戦っていた訳ではないが、 それでも村長家の一員として、村長の父が倒れ、兄は村内の別の問題への対応に当たっていた状況下で、 家族を生活を守るために父に代わって家の義務を果たし、戦うことを選択した。

その選択に後悔はなかった。
苦労も危険も辛いことも沢山あったが、そうしなければ自分たちの生活を護ることもできなかったのだから、 自分の選択とその結果として受け止めていた。

そのベルナルドから見れば、自分で選択して軍人になったはずなのに軍人の覚悟も認識も未熟で、 自分が起こした犯罪の結果の責任をとるという、自身の行動から生じた義務にすら無責任な態度をとり、 被害者の態度への不満だの被害者への面罵だのと自制心もなく要らぬ口を閉じることさえできない甘えを露呈し、 挙句にその未熟と無責任と甘えのツケを他人に被害者に背負わせさえしているティアの態度は、 いくら眼を潤ませようと、表情や雰囲気に悲哀を含ませていようと、同情どころか苛立ちと嫌悪が募るばかりだった。

「ああ、でもタタル渓谷のセレニア畑付近に飛ばされてから、私たちと出会った辻馬車の所まででも、既にルーク様に戦わせて護らせていたのよね? なら、その分の代価をティアさんはルーク様に払わないといけないことになるんだけど、それはどうするの? 働かせておいて、それも詠唱中は護ってとかこき使っておいて代価は払わないただ働きだなんて、食い逃げの所業じゃあるまいし ・・・・・・あ、この例えちゃんと通じているかな? 世の中ではね、品物を食べたりするには、ただじゃなく、お金を払って購入しないといけないという仕組みがあって・・・・・・」

「そんなこと知っているに決まっているでしょう!! 私は食い逃げなんてしたことないし、物を買うのにお金を払うことも知らない訳ないじゃない!」

まるではじめてのおつかいに行く幼い子供に、親が世の中の仕組みを説明してやるようなことを侮りを露わにした態度で言われて、 真っ赤になったティアが激昂して否定しても、二人の侮りは微塵も緩和しなかった。

「でもルーク様には既に戦闘員として働かせて、しかも詠唱中は護ってとこき使って、 これからもそうするつもりで、それでも代価を払うことも払うつもりもなかったのよね? それでは売り物を食べておいて代金を払わない食い逃げのような、 いえ、ルーク様は傭兵のように戦闘員として雇われるのが生業でもなくティアさんに雇用されてもいないし、 被害者だから例え払うつもりがあっても戦わせるのは信じられない行いに変わりはないけれど、食い逃げよりも更に悪質で厚顔よ」

しかもルークの話では、頭を下げてお願いしたわけでもなく、被害者に戦わせるのが申し訳ないという態度さえなく、 タタル渓谷に飛ばされた直後からもう戦闘員のように扱われて、詠唱中は守ってと叱られて、戦闘への未熟さを侮ったような態度だったというから、 ティアはルークが戦うことも自分を護ることも当然、自分はルークに戦わせ護らせルークをこき使ってかつ代価など支払わず搾取する立場にあると、 重い無償賦役を課して領民を搾取する性質の悪い領主が領民に抱くような、嫌な特権階級意識を抱いているようにすら感じられた。

ティアは気付いていないようだが、ティアが起こした問題の責任や賠償もティアひとりに留まるものではないだろうし、 もし戦わせたルークが怪我をしたり亡くなったりすれば、 より賠償も責任も周囲や他者への波及も重くなるし、ダアトとキムラスカの間で国際問題や戦争になる可能性さえある。

いくらダアトに宗教的権威があるとはいえ、過去にキムラスカやマルクトとの間に国際問題が起こらなかった訳ではないし、 預言を重視しなくなっているというピオニー皇帝や、ホド戦争以来神託の盾騎士団や預言士嫌いになっているという セントビナー名誉市民のマクガヴァン元元帥のような人物は上層部にも少なくはない。
そうでない人間であっても、過去に教団に好意的だった人間が教団員の起した問題で一転したことがあったように、 親族や要人への危害や横暴な対応によって心情を悪化させることもありえるというのに。
ルークを戦わせ、自分を護らせ、危険な重労働を負担させて、姉か教師のような態度や横暴な扱いすることが、 ただでさえティアのみならずダアト自体が陥っている窮地を更に悪化させていることを、 他人に数多の戦いの厳しさを含めた艱難辛苦を負わせ犠牲を払わせる懸念すらあることを、 どうして何も気にせず考えようともせずに、こんなにも無知で無恥でいられるのだろう。

「私だってルークからお金も何も貰っていないわ! むしろ私の方が、この馬車代のためにペンダントを売って払ってあげたのよ!? それなのにルークはそれを当然のように受け止める無神経な態度で、私を気遣うこともなくて、また呆れたり苛々させられて・・・・・・」

「え、それルーク様が気遣わないといけない所なのか? 俺には、そこでルーク様の態度に呆れたり苛々することの方が意味不明で理解不能で、 むしろ被害者が加害者の賠償を気遣わない態度を無神経だという方が聞いているだけでも苛々するが・・・・・・」

「でもあのペンダントは私の大事な!」

「そんなことルーク様は知らないだろう。 友人や身内ならともかく加害者の、それも態度の悪い加害者の気持ちなんて察しない方が普通だから気付かないのも無理もないしな。 というか屋敷への襲撃や攻撃で、渓谷での戦闘で、ティアはルーク様の命すら危険に晒してきたのに、そのルーク様に気持ちの推察を求めてたのか? まさか命が大事なものだってことを察せられなかったとか、襲撃や攻撃や戦闘が命を失う恐れがあると察せられなかったとか言うなよ? 危害を加えるつもりはないとか言ってたらしいが、睡眠や麻痺の効果は転倒の恐れがあるし、倒れて頭でも打ったら死ぬこともあるんだぞ。 一時的に軍役で戦闘参加していた俺だってそんな例はいくつも見てきたのに、軍人が、それも睡眠や麻痺の譜歌を操る音律士が察せられないってどれだけ呆れさせるんだよ。 自分はルーク様の大事な命を何重にも失いかねない危険に晒して気遣うどころか横暴な態度をとってきたのに、 ルーク様はティアの大事なペンダントだの犯罪の賠償で自業自得に失うだのをいちいち気遣ったり大事だと察したりしなきゃならないのかよ」

ずっとルークに当然のように求めて、得られないことに不満を重ねていたものが、最初から得られるはずもなかったと見当違いを暴かれても、 それでもティアは未だにその違いを、得られるものと得られないもの、許されることと許されないことの違いを受け入れることができなかった。

ユリアシティ市長の義孫のティアは、ユリアシティでは特別扱いを受けて育ってきた。
というよりはティアが、市長の義孫という立場を利用して、勝手に自分で自分に過度の特別扱いを許していた。

ユリアシティの図書館には幼児入館禁止の規則があり、他の市民の子供なら入らないか入ろうとしても叱られるが、 ティアは市長の義孫という立場から叱られないのを悪用して、図書館に入り込んでは蔵書の閲覧を繰り返していた。

書物はダアトでも高価なものだが、物資の少ないユリアシティでは更に手に入り難く、 しかもティアが入っていた特別室の歴史や音素などの学術書は書物の中でもより高価なもので、蔵書の多くは市民の税金や寄付で集められていた。
其処に本の取り扱い方が未熟で、破損や紛失の恐れも大きい幼児の立ち入りを禁止するのは、ちゃんと理由がある規則だった。

しかしティアはそういう禁止事項を正式な特権でも許可でもなく自分勝手に破り、罪悪感も市民の一員としての羞恥心も感じることなく、 他の市民には許されない特別扱いを満喫していた。
そして、ユリアシティでの孤立を、余所者への冷淡としか思わず、この街が小さいから、人の多い所やダアトに行けばと環境ばかりに責任転嫁して、 市長の孫娘の立場を悪用し、市の規則を守らなかった自分の行動が、 きちんと規則を守っている他の市民にどう思われているのか推察することはなかった。

キムラスカのファブレ公爵邸への侵入さえ、図書館に侵入した時のように、立ち入り禁止の場所への侵入など大したことだとは思わず、 ユリアシティで“咎められない”から侵入も閲覧も容易かったように、ファブレ公爵家でも“咎められない”状況を作れば容易く侵入もヴァン暗殺もできると考え、 譜歌で住民を、ルークを攻撃して眠らせている時も、大したことだとは思わなかった。

そうやって祖父の地位を悪用して、他の市民が我慢している不自由を我慢せず、自分が住む市の規則や守らない時の市民の反感という世間に無頓着に、 禁止区域への侵入や高価な本の無断閲覧といったわがまま放題に育ってきたティアには、 自分が特別に扱われないことも、自分で自分を特別扱いするような言動を叱られることも、 自分のものだと思っていた玩具を取り上げられた子供のような欲求不満しか抱くことができず、 ただ不貞腐れたように顔を歪めて、八つ当たりにルークを恨みがましく睨むだけだった。

「まさかと思うけど、この先の旅費を、ルーク様を戦闘に参加させて稼いだガルドで払おうとか思ってないよな?」

「・・・・・・そうだけど、そこまで私が悪いっていうの!? 何もルークに全額払わせようという訳じゃないわ、二人で稼いだガルドで払うのよ。 二人で旅をするなら、旅費は折半するのが当然でしょう。 貴族のお坊ちゃんだからって奢ってあげるなんて甘やかしや媚びはしないし、そんなのはルークの教育にも良くないでしょう」

複数で旅をするなら費用は割り勘で当然、むしろ甘やかされたわがままなお坊ちゃんの躾には有効だとすら思って胸を張ったティアの態度に、 ベルナルドは絶句してしばらく開いた口を塞げなくなり、イレーネはティアの方まで風圧がくるほどの速さで手を顔の前で振っていた。

「いやいやいやいや、だからティアさんは加害者、ルーク様は被害者だってば。 友人が食事代を割り勘にするのとは違うのよ?そんなルーク様にも半分払わせて当然みたいに言わないでよ。 お屋敷で犯罪が起きたのも、それに巻き込まれてこんな遠方に、それも町や村からも遠い魔物だらけのタタル渓谷に飛ばされたのも、 全てルーク様の意思でも責任でもなく、ティアさんの犯罪に巻き込まれてのものなら、ティアさんはルーク様を無事に送り返すのはその責任、賠償であって、 ルーク様は戦闘に参加せず、ずっとティアさんだけに戦わせて護られていても、ティアさんに代価を支払う必要なんて生じないわよ。 いってしまえばティアさんは出会った時点でルーク様に多額の賠償金支払い義務を負っているようなもので、 帰還の旅でかかる戦闘などの労働と旅費負担は、賠償のうちとしてティアさんが全額持つべき費用ってこと。 馬車代に売ったというペンダントも、犯罪のせいで飛ばされたならそれは帰還費用は加害者が持つ必要になるし、遠ければ遠いほど費用は多額になるけれど、 賠償も多額になるのも、お金がなければ他の財産をお金に代えることになるのも、全部加害者の自業自得じゃない。 たまたま飛ばされた先にいた、被害と無関係な他人が、同情や善意で費用を出してくれたわけじゃないのよ? ティアさんに全額払わせたってルーク様の甘えにもならないし、媚びとか奢りじゃなく責任をとるべきだと言っているんだけど・・・・・・ 犯罪からの帰還の旅の費用を被害者が折半するのを加害者が当然のように考えているなんて、 ティアさんがご不満の“馬車代賠償ティアさん加害者がペンダントを売るのを気遣わなかった ルーク様被害者の態度”なんて、 前提考えれば気遣われなくて当然のものよりも、比べようもなくティアさんの方が傲慢で無神経に感じるわよ」

「馬車代だけじゃなく、お屋敷に返るまでの旅費は全額ティアが負担する必要があるのに、 戦う必要のないルーク様を戦わせて、護らなければならないルーク様に護らせて、 それで稼いだガルドをティアが起こした犯罪の賠償に充てて当然のように受け止めるなんて、信じられないほどの無責任だろう。 加害者が負うべき賠償を被害者が払うのが当たり前だと覚えてしまったら、その方が教育としては問題があるぞ。 というか一体どういう教育を受けてきたら、自分の負うべき賠償費用を被害者に割り勘当然みたいな思考になるんだ・・・・・・? しかもここからキムラスカまで帰るなら徒歩では何カ月も、馬車を使ってもかなりの日数がかかるし馬車代で費用も嵩むぞ。 ティアは一体、どれだけのガルドをルーク様から搾り取るつもりだったんだよ・・・・・・? 労働搾取に金銭搾取、更に出会った時にダメージ効果と命を奪う危険がある譜歌攻撃、人から奪うこと息を吸うが如しだな」

ケセドニアの関税と共に寄進が二大財源になっているローレライ教団では、 寄進を当然のように思い上がった末に、多額の寄進を要求して得られないことに不満を露わにし、挙句に相手へぶつけるような悪癖を持つ者もいた。
噂では、教団の運営資金として寄進されているガルドを、自分の身勝手のために浪費したり、 浪費する金を得るために更に寄進を得ようと強引な方法をとる者もいるとも言われていた。

そうした腐敗が教団の大きな問題点であり、キムラスカやマルクトはおろか、 教団が後ろ盾のケセドニアの商人とも軋轢を生じさせ、敵意を抱かれる原因になることもあった。

改善しようとしても、寄進と浪費を当然の権利のように考えている者たちは、そもそも何が悪いのかすら分かっていないような反応をすると、 教団にいる友人が疲れた様子でこぼしていたのを思い出したベルナルドは、ティアもその類いかと疑ってますます軽蔑を深めていった。

「それなのに被害者のルーク様が、加害者のティアさんが帰還の旅費の一部を持つのを当然のような態度でいたら、気遣わなかったら無神経になるの? ティアさんは被害者のルーク様が、本来被害者側が持つものではない旅費をルーク様が参加した戦闘で稼いだお金で持つのが当然のように思っていたのに? 旅での戦闘の負担と危険すらルーク様に負わせて、気遣いもせずに盗賊にも劣るように面罵すらしていたのに?」

もはや知識や常識を疑うを通り越して人格を疑っているような視線で見詰められ、盗賊と同じかそれ以下のような侮蔑を向けられたティアは、 とうとう駄々を捏ねた幼い子供が泣き出す寸前のような表情になった。

神託の盾騎士団への入団前に家庭教師のようにユリアシティまで来たリグレットから実地訓練を受けていた頃に、 希望していたダアトの士官学校へ行けないことが不満で、 訓練へのやる気のなさを、身の入らないだらしない態度で察して貰って指導を止めさせようとしていた時のように、 ティアは家族でも友人でもない他人、気持ちを察して貰えるような関係でもない相手に対して、 察してもらえるようなものではない気持ちを察してもらって当たり前という甘えを期待し、 それが叶えられなければ酷い無神経な態度をとられたように傷付くという所があった。

だから自分を護って戦ってくれる、自分のルークへの侮蔑に同意してくれる、そう期待していた憧れを抱いていた相手から、 気持ちを推察されない上に、重ねて否定と反感と冷遇を受けるなんて過大な不満と心痛を感じ、 まるで母親に気持ちを分かってもらえない幼児の癇癪のように不満を爆発させて、かつてしてきたように特別扱いを当然の権利のように享受しようとした。

「私だって、最初はルークに申し訳ないと思っていたわ! でも、ルークの態度が悪くて・・・・・・だってルークがあまりに馬鹿で無神経で! 何度もルークに苛々させられるうちに薄れていってしまったのよ。 ルークがこんなににも横暴でなければ、一緒にいるのがこんなにも傲慢で無神経な人でなければ、私だって申し訳ないという気持ちを保てたわ。 いくら事情を考慮して引いても、ルークの態度は私には我慢がならなくて、私との問題を起してばかりいるんだから、そのルークに苛々をぶつけるのも仕方ないでしょう!? どうしてルークなんかの味方になるの、ルークの気持ちより私の気持ちを察してくれても良いじゃない!!」

しかしベルナルドにとっては、ティアから気持ちの推察を期待されるなど、身の毛がよだつほどにおぞましいものでしかなく、 その上にルーク被害者の立場も被害も気持ちも無視しての ティア加害者への優遇など、 被害者を無視して加害者を優遇する冷血漢になれと言われるようなものだった。

「苛々させられるからなんなんだよ! 元々の身内や友人や仲間でもない、互いの意思と自己責任での旅でもない、加害者と被害者が加害者の責任で旅しているのに、 被害者の加害者への悪い態度も嫌な思いも我慢できない、苛々するから被害者に盗賊にも劣るとか不満をぶつけます、 申し訳ない気持ちを薄れさせますっていうのか?横暴はどっちだよ!? 普通に察すれば被害者の方がよっぽど苛々も不満もあるに決まってるだろう。 渓谷での旅の労苦や不自由からの苛々や不満も心身の疲れも、俺たちは自分の意思で仕事で来てるから我慢してるけど、 ルーク様の場合は自分の意思でも仕事でもなくティアの所為で負っているものなんだぞ? それを態度で加害者にぶつけるのは我慢できない、 態度の程度にしても被害者への加害者への不満の発散としては甘いくらいだったのにそれすらも我慢できない、 そんなのはルーク様の落ち度でも欠点でもでもなんでもない、ただのティアの甘えだろ。 これで申し訳なさが薄れたっていうなら、最初から吹けば飛ぶ様な薄っぺらい申し訳なさしか持ってなかったって言ってるのと同じだぞ。 ルーク様の態度を我慢できないティアと問題が起きるのも、ルーク様が問題を起しているんじゃなく、ティアの傲慢や無神経や甘えが引き起こしている問題なんだよ。 現にルーク様が起きていた時に会話をしても、俺やイレーネは別にルーク様に苛々しなかったし、 ルーク様の態度も俺やイレーネへのものはティアへのものとは差があったし、誰かれ構わず問題を起こすような性格には見えなかったぞ。 そうやって事情や前提を考慮しないか、考慮してもほんの一部だったりすぐ忘却したような態度から気持ちを推察すればするほどに、 ティアの気持ちも価値観も性格も悪いように察せられて、苛々も呆れも深まるばかりなんだよ。 ティアは一体、どれだけ自分を守りたいんだよ、自分のために他人を苦労させて搾取して犠牲にすれば気が済むんだよ? 他人に、ルーク様に、同僚に上司にダアトの民衆に至るまで数多を窮地に追いやって艱難辛苦を背負わせて、 それでもそれを緩和するために、更に悪化するのを防ぐために、最悪の事態を避けるためにの我慢も苦労も嫌がって、 被害者を戦わせず護る、被害者の態度が優しくなくても愚痴られても我慢するってことすらできないのかよ!問題を引き起こした張本人のくせに! そうやってティアの罪と甘えのツケを払わされるのはな、またルーク様や、ダアトや教団や騎士団の人たちなんだぞ!!」

イレーネがティアをきつく睨みつつも、弟の震える肩に手を置いていることでなんとか耐えているが、 ベルナルドはダアトにいる父や兄、弟妹や故郷の村人、教団や騎士団にいる知己の人々のことを思うと、 ティアへの苛立ちは殴りかかりたくなるほどだった。

普通に加害などない状況で出会い旅をするのなら、相手の態度の悪さで反感を抱くのは理解できるし、それを態度に出してしまっても事情として考慮しただろう。
被害者が、加害者の態度が悪くて反感を増して、更に態度が悪化したのなら、理解できるし同情しただろう。
しかし加害者が被害者の態度が悪い、そのせいで反感を抱いた上に態度に出して被害者に苛々をぶつけていたなどと、 理解できる思考でもなく、考慮する事情でもなく、同情など爪の先ほども湧かなかった。

大体、ルークの態度が不満というが、言葉で旅の労苦や不自由を愚痴るのは、旅自体が加害者のせいで飛ばされてのもので、 当然準備もなく着の身着のまま、魔物がいる渓谷なのに持つ武器は稽古用の木刀という状況では無理もないし、 背中を預けられる相手だと思わなかった、詠唱中に護るのが不十分だった、姉や教師にするような態度をとらなかったなどの不満も、 ティアにとっては許し難く苛々したのかもしれないが、それはルークの問題ではなくティアの要求が過大なだけで、むしろティアの問題点だった。

その程度の態度や問題で、その上に稽古用木刀で戦ってくれていた相手を、 「一緒にすれば盗賊も怒るかも」と面罵するほど苛々していたなど、ティアの自省も自制もない心根を露呈するだけだった。

そもそもルークからティアへの態度を見、被害者から加害者への態度を見て、 ルーク被害者が傲慢や無神経な人間だなどと、図り方に問題がありすぎた。
そんなものを性格の推測材料にしていれば大抵の人間は悪くなってしまうし、むしろルークとは比較にもならないほどの態度に出る人間の方が多いだろう。

実を言えばベルナルドもイレーネも、ルークの態度は17歳にしては子供っぽく知識が少ない所が見受けられるとは感じていたが、 一方で突然に魔物のいる渓谷に飛ばされて、軍事訓練や山歩きの経験などもないのに、 しかもタタル渓谷は油断すると足をとられそうなほど歩き難い土地なのに、 戦闘や始めての渓谷歩きへの多くの不満を、愚痴をこぼすぐらいに抑えて歩き続け戦い続けた所は、普通の17歳よりも我慢強い方にも感じたし、 犯罪の衝撃や加害者からの高圧的な態度、愚痴れば呆れられるせいで抑制せざるを得なかったのではないかと心配になったほどだった。
もしベルナルドが同じ経緯でルークと旅をすることになったなら、愚痴や不満を表すことの我慢はもちろん、 被害者の心情や苦痛を理解して気遣うためにも、被害者に言葉で吐露させて少しでも楽にするためにも、むしろもっと言い易いように配慮しただろう。

ティアがルークの態度や未熟さへの不満を並べ、それを自分の態度の言い訳に使う度に、 「そんなことも我慢できないのか?」、「どれだけ被害者に我慢させるんだ?」、 「そこまで被害者にさせていたのか?」、「そこまでして貰って感謝や自責はないのか?」、 とより強い軽蔑や疑惑や敵意になって、ティア自身に跳ね返ってくるばかりだった。

「愚痴っていようと詠唱中に守れないことがあろうとなんだろうと、それでもルーク様はここまで戦っていたんじゃない。 軍人でも傭兵でもなければ、戦う立場や関係でもなく責務もなく、逆に全く戦わずにただ護られていても構わない被害者という立場なのに。 ティアさんはタタル渓谷に飛ばされてからここまでのルーク様の態度を悪し様に詰って自分の態度の悪化の言い訳にしているけれど、 ルーク様は襲撃や譜歌攻撃の上に、タタル渓谷に飛ばされてからここまでの間にも、 わがままどころか、むしろティアさんのわがままのツケを払わされて、 ティアさんの起した犯罪の負担をかけられて、ティアさんの面倒見てくれてるってことじゃない。 なのに愚痴っただの、気遣わないだの、軍人と比べて頼りないだの、背中を預けられる相手だと思えないだのと、 ただでさえ負担をかけている相手に、面倒見て貰っている自覚もなく、感謝することも罪悪感を抱くこともなく、不満だらだらに見下した上に更に過大な要求をするって、 親でも護衛でも使用人でも乳母でもないルーク様に、一体どれだけ甘えているのよ。 それこそルーク様の姉や教師のつもりどころか、母親に面倒みて貰う赤ちゃんのつもりででもいるように見えて、もう苛々や呆れを通り越して滑稽よ」

「自分の面倒も自分で見れてない、自分の起した犯罪や迷惑の賠償も十分にできないしするつもりすらない、 挙句に被害者のルーク様にすべき我慢も配慮もできず、負担も面倒も迷惑も苦労も心労もかけまくっている状態で、 一体ルーク様に何を教えているつもりで、何に苛々して呆れていたんだ? 自分の起こした犯罪の責任の帰還の旅で、戦闘を被害者のルーク様に負担させた上に旅費までその戦闘で稼いだガルドで折半させてる状態じゃ、 面倒見てやっているのも、苦労させられているのも、無知やわがままや傲慢を我慢して苛々させられるのもルーク様の方だぞ。 ルーク様のこと未熟だ子供だと言ってるけどな、俺にはティアは、ティアがルーク様にとっている態度は、 自分で尻も吹けない幼児が、親でもないし給金も貰ってないのに苦労して面倒見てくれている他所の子供に対して、 “あたちがよのなかのきびちさをおちえてあげるわ!”“あれをちなちゃい、これをちなちゃい、できないのはおこちゃまよ!わがままいわにゃいで!” ってワガママ放題に威張ってるくらいの可笑しな光景に映るぞ」

そんなクソガキ、ダアトでも今いるマルクトでも一度も見たことないけどな、 とベルナルドは子供っぽいは済まされないティアの幼児性にうんざりとした気分を吐き捨てるように呟くと、 ティアから向けられている期待を、鬱陶しい見当違いを、完全に否定し拒絶した。

「大体、なんか俺だったらルーク様より態度が良くなるみたいな期待というか気持ちの悪い誤解をされてる気がするけどな、 もし俺がルーク様の立場だったら、タタル渓谷で背中から襲って殴って倒すくらいのことはやっていたし、 そうされたってティアは、ルーク様にしたことを仕返しされただけにしかならないんだぞ。 何しろ出会った時に、ティアはルーク様を襲って、エナジープラストくらいの威力と転倒などの危険性のあった眠りと痺れの譜歌を、 下手をすれば重症や死亡の恐れさえあった危害をルーク様に対して加えて倒そうとしたんだからな。 目的だろうと手段だろうと、そんなの使った時点で背中を預けられるどころか、背中から襲われてやり返されても同情できやしないぞ。 その上に態度がこれじゃ、俺だったら到底我慢できずに、殴って倒すよりももっと厳しい扱いをして、 それこそ不満をぶつけることもできないほど物理的に黙らせてただろうな」

「譜歌攻撃なんて武器で殴ったも同然のことした相手から殴られないだけでもすっごく容赦されているのに、 危害加えて傷付けた自覚も容赦されている自覚もないなんて、ティアさんにとってはルーク様は、他人は、戦闘訓練用の譜業人形が何かなの? どうしてあの行動、状況、態度でルーク様を傲慢や無神経な人間だと思ったのかも、信じられないし理解不能だけれど、 この上に態度まで親しい家族か教師か友人にするように、礼儀正しく優しく気遣い溢れた紳士的なものにしないと我慢できないの? そんなの失礼を通り越して、もう命や心がある人間として扱ってすらいないように映って、 気持ちや人格を推察すればするほど、ティアさんがルーク様への不満や呆れを表せば表すほど、 ますます透けて見える悪意や愚劣に息が詰まりそうよ・・・・・・」

姉でも教官でもなく、加害者のティア。
弟でも生徒でもなく、被害者のルーク。

実戦を想定した軍事訓練を半年以上もじっくりと受け、武器など装備や物資の支給を受けてから戦っていた神託の盾騎士団の軍務のティア、 ヴァンを襲った時に使っていた実戦用の鉄製の杖を持つ現在のティア。
軍事訓練も実戦経験もなく、着の身着のままで飛ばされ稽古用の木刀を持つルーク。

──そのルークを姉や教官が弟や生徒を叱るような態度で叱責し、戦わせ、自分を護らせ、その戦闘で得たガルドで旅の費用を補填するつもりで、 ルークが愚痴れば気遣わなければ背中を預けられる相手でなければ不満を抱き、盗賊にも劣る様に面罵して苛々をぶつけていたティア。

憧れていた騎士に護られるお姫様のような立場は、憧れていたわがままな弟を叱る厳しい姉や新兵を教育する教官のような振舞いは、 ティアとルークの真実の出会いや関係、旅立った経緯や旅の間の言動やルークに更にかけた負担や苦労や面倒を前提にすれば、 ティアの抱く美化と陶酔とは正反対に、滑稽なほどに醜悪だった。

そして察しようとすればするほどに、事情を考慮すればするほどに、 知識や常識、軍人の覚悟や実力、加害者の自覚や責任感や自制心、人格や精神年齢に至るまで疑わしくなるほどに、 他人を呆れさせ、苛立たせ、称賛や同情とは反対の感情をティアに抱かせるものだった。



その後、実は途中から眼が醒めていたが、起きるに起きれず会話を聞いていたルークは、 エンゲーブに着くと二人の紹介で腕にも人柄にも信頼のおける傭兵を数人護衛に雇い入れた。
代金は一先ずルークが身に着けていたファブレ公爵家の紋章入りのボタンを証明に後払いの契約を結び、 バチカルに到着した時には公爵家が支払ったが、後にその数カ月分の護衛代金と武器やグミなどの必要経費、 旅費やルークの戦闘負担への賠償など旅の間のものに含めて、 ファブレ公爵家襲撃の数十人分への譜歌攻撃の慰謝料や治療費、睡眠効果で転倒した際に落として破損した割れ物の賠償など、 様々な種類の多額の賠償金がティアに対して請求された。

当然ティアひとりに支払えるはずもなかったため代わりに負うことになった義祖父テオロードは頭を抱え、 加えて義孫がキムラスカとの国際問題を引き起こした責任を問われてユリアシティ市長の職を辞すまでに追い込まれた。

更には投獄されて厳しい尋問を受けているティアを脱獄させようとしたヴァン・グランツらへの投獄、尋問で発覚したテロ計画や、 神託の盾騎士団総長の地位を利用しての莫大な教団資金の使い込みまで、様々な種類の多額の賠償金がグランツ家に請求され、 ユリアシティの自宅からダアトに持っていた別邸まで財産を総浚い売り払い、 その後はダアトでもユリアシティでもテオロードとティアの姿を見かけることはなくなった。

ティアについては後に三国が共同で行った外郭大地降下作戦に捕縛されたまま同行しているのを見たとも、 処刑されたとも教団上層部が政治的譲歩と引き換えの裏取引で密かに引き取ったとも様々に噂されたが、 ティアは二度と公の場にも街中にも姿を現すことはなく、人々から忘れ去られ消えていった。












ティアの訓練期間やリグレットへの態度、幼児立ち入り禁止の図書館への侵入は小説『黄金の祈り』設定です。
嫌な子供時代だと感じましたが、ゲームでのティアも不法侵入、高価な書物の価値に無頓着、 それによって他人にかける迷惑や向けられる悪意にも無神経と似たような言動をして、 というか子供時代のそれを悪化させたようなことをしていたので、ある意味ティアらしいというか、妙に納得してしまいました。
貴族のいないユリアシティでの特権階級というか、貴族の特権のように正式に認可されている権利ですらないので、特権の行使とすら言えませんね。
13歳の時に街での孤立について祖父と語る時も、理由に過去の自分の行動を連想せずにユリアシティの環境ばかりを連想していたのを見ると、 ティアは成長しても自分の行動を問題だとも思わず、自分の行動への市民の心情を気にかけてもいなかったようです。

ラルゴはバダックと名乗っていた頃は傭兵をしていて、小説では商隊の護衛に雇われていましたが、 キムラスカに帰り着くまでルークは何カ月もの間、本来被害者のルークが負う義務はなく、ティアが負うべきだった戦闘負担を追っていますから、 バチカルに帰り着くまでのルークの行動を傭兵のようにガルド換算すれば、馬車代以上のかなりの大金になるのではないかと。
これで戦ってくれている被害者&非戦闘員相手に盗賊も一緒にすれば怒るの人が悪いの背中を預けられる相手だと思えなかっただのなんのかんのと、 不満たらたらでルークに直接言うことも何度もあり、後々まで当時を回想して不満をぶつけていたティアって一体・・・・・・。
エンゲーブでルークがお金を払う前にリンゴを食べてしまったことを、 (これは正確には屋敷に軟禁されていたから屋敷の使用人の纏め払いに慣れていて、今は使用人がいないから自分が払う必要があるのを忘れていたからで、 気付けばちゃんと払っていたのを見ても、代金を払うつもりがないわけではありませんが) ティアは相当に呆れた様子でしたが、ティアが他人に労働を、しかも被害者に危険な戦闘を、ただ働きでさせていた態度はそれ以上に代価への無頓着に思えます。

ティアとアニスは神託の盾騎士団の軍人、アニス導師守護役なので、軍務やイオンの護衛には給料として代価が支払われますし、 ジェイドはマルクト軍の軍人なのでマルクト軍から給料が支払われますし、 またジェイドはイオンとルークに対しては、和平の使者一行への同行と仲介協力を依頼したのでその間の安全の方も責任があり、 カイツール軍港でルークが「こいつら俺を助けてくれたんだ、なんとかいいように頼む」と 和平の使者としてのジェイドの通行が円滑に進むように取り成したりしていたので、 ルークは自分を助けた代価を、ちゃんと行動でジェイドに払っています。
ガイはファブレ家の使用人で護衛剣士、ファブレ家の命令でルークを捜しに追ってきたので、 ルークの護衛代金や旅費などはファブレ家から支払われているでしょう。
ナタリアの場合は本来の人員ではないのに強引についてきたので別とすると、 実はあのパーティの中でルークだけが戦うことを代価なく、 しかも事前訓練や実戦経験なく稽古用の木刀しか持っていないという、より苛酷な状態でさせられていたことになります。

他のゲームの主人公とヒロインや仲間は家族や友人など親しい関係にあったり、意気投合して同行したり、軍やギルドなど同じ組織に入ったり、 悪者に狙われたヒロインを主人公が護るというような状況が多いので、ティアとルークの場合は出会いも関係も旅や戦う破目になった経緯もルークの戦いにおける経験訓練装備も、 何もかも他のゲームの主人公とヒロインとは違うので、他の主人公なら良くある行動をさせられるのにも、 ヒロインが求めるのも、できないことを侮るのにも、非常に違和感を覚えてしまいます。





                        
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