何も知らなかったとしても、利用されたとしても、騙されていたとしても罪なのだと彼は言った。
たとえ到底想像できない事態であっても、逃避は許されず責任を認めなければならなかったのだと。
「──その言葉は何重にもお前自身に跳ね返ることを自覚しているか?ジェイド」
諸刃の剣は重さを増して跳ね返る
アクゼリュスについてのルークの話とジェイドの報告の齟齬に気付いて詳しく話を聞きとった結果、
彼にとって都合の悪い部分、重要な部分が大きく省かれていると気付いたピオニーは、ジェイドを私室に呼び出して詳しく問い質していた。
しかしジェイドは報告する必要もない些細なことや下らないことだったからだと悪びれもせず、
アクゼリュス崩落の責任をルークのみに背負わせ、ユリアシティに置き去りにし、
その後も責任を認めて償おうとした彼を嘲り、無視し、上から見下すような態度の理由を問い質した時も、
やはり悪びれもせず当然だとでもいうような態度のままだった。
「馬鹿な話に苛々したからですよ。
何も知らなかったとしても、騙されていたとしても、想像もできなかったことだとしても罪は罪であり責任はあるでしょう。
操ったのがヴァンであろうと、ルークがアクゼリュスを崩落させた一万人殺しであることは変わりません。
ヴァンが怪しいことは以前からティアが忠告もしていたのに、あさりと騙されるなど愚かしいにもほどがあります。
それなのに自分の否を認めようともせず、全て人のせいにしようとするなんて見苦しくて、私も彼らも呆れて付き合っていられませんでしたよ」
「──お前がそれを言うのか。よりにもよって、お前が・・・・・・っ!!」
主人の機嫌を感じとったのか、何時になく隅に固まって震えているブウサギたちを気遣う余裕もなく、ピオニーは表情にも声にも怒りを浮かべるのを抑えられなかった。
何も知らなかったとしても、騙されていたとしても、想像もできなかったことだとしても罪は罪。責任がある。
そんな論理を、よりにもよってこの男の口から聞くことになるとは。
「お前や、ティアやガイラルディアたちの様子はまるで、“ルークだけ”に責任があって自分たちにはない、自分たちは“悪くない”と言っているかのように思えるが?
ルークは騙されていたとしても責任があるが、自分たちに責任はないと」
「当然でしょう。私や彼らに何の責任があるのです?」
臆面もなく言い放った言葉に、ピオニーはしばらく二の句が継げなかった。
「・・・・・・本気で言っているのか、ジェイド」
「本気ですよ?何をそんなに驚くのか分かりませんね」
ヴァンとリグレットが外郭の人間を消そうとしているのを知り、超振動実験の目撃やヴァンから思想の一端を聞いたことすらあったティア。
ヴァンの同志であり主従であり、本当の目的がアクゼリュス崩落への利用とまでは知らずとも、
ルークを利用するために騙すのを承諾し、協力し、また騙されているルークを見捨てていたガイ。
守護役でありながら何度もイオンから離れ、アクゼリュスにおいても彼女の任務ではない救護に無断参加して本来の任であるイオンの護衛を果たさず、
イオンをヴァンの利用から守れなかったアニス。
騙されていたとしても知らなくても、知りようもなかったとしても責任がある。
その論理を使うならば彼らには多くの責任があり、
彼らがルークを責めたアクゼリュス崩落やヴァンに騙されたことにも、彼らは幾つもの責を背負わなくてはならないはずだ。
しかし彼らはアクゼリュス崩落やヴァンに騙されたことに彼ら自身の責任を認めた上でルークの責を追求してルークと共に責任を背負うのではなく、
ルークのみに責任を認めさせ、自分たちは責任を認めるどころかルークとは違うと言わんばかりの態度を取り、
ルークだけに責任を背負わせて自分たちの責任からは逃避したようにしかピオニーには思えなかった。
ここにはいない彼らにも呆れたが、何より目の前の幼馴染に、己が何も知らなかったからと庇ってきた男に呆れ、失望感に溜息をつく。
「キムラスカ国王は、最初から預言通りにアクゼリュスを崩落させるために“ルーク”を親善大使としてアクゼリュスに送った、そうだな?」
「ええ、それが何か?」
「そしてお前はそれに何の警戒もしなかった。騙されて、ただ和平と救援のためだと信じ切って、アクゼリュス崩落の一端を担ったのか」
「ピオニー?何を言っているのです?」
“騙されて”を見下していたルークではなく自分自身に向けられたことで、プライドでも傷付けられたのか初めてジェイドが僅かに動揺を見せた。
「お前自身が言ったことだろう。
騙されていても、何も知らなかったとしても、例え想像できない事態であっても責任があるのだと。
最初からインゴベルト6世が預言に詠まれたアクゼリュスの消滅を起こすために“ルーク”を送ったと言うのなら、
お前はインゴベルト6世に“騙されて”、預言のためにアクゼリュスを崩落させるなんて“何も知らずに”、
俺がお前に託したアクゼリュス救援を“利用されて”、インゴベルト6世の思惑のままに、崩落を引き起こすための“鍵”をアクゼリュスへと連れて行ったことになる」
それはお前を選んだ俺自身にも跳ね返るがな、とピオニーは苦く自嘲を付け加える。
キムラスカへ辿り着けるだけの戦闘力と、アクゼリュス救援に続いて向かう時のために医学的知識という能力だけで選出したが、
後になって考えると、全てを自分本位に考えて他人の内面が盲目的なまでに見えないこの男を選んでしまったことに、何重もの後悔が押し寄せる。
「それにお前は、バチカルでヴァンを信用するような発言もあったそうだな。
ヴァンが囮の船に乗って神託の盾を騙す作戦を実行すると言った時、
“よろしいでしょう。どのみちあなたを信じるより他にはありません”と承諾したのだろう?
ティアは兄が怪しいとルークにだけではなくお前たち全員の前で言っていた。
ならば、ティアの言ったことを信じずにヴァンを信用して騙されていたことはお前たち全員に当てはまる。
ましてお前は、ヴァンへの信用を明言していたのだからな」
「・・・・・・信用できるはずがないでしょう。
確かに彼女はヴァンが怪しい、戦争を起こそうとしているとは何度か口にしてはいましたが、
具体的な根拠もなく、兄を怪しむに至った経緯も戦争を起こそうとしていると感じた理由も打ち明けなかったのです。
ましてヴァン・グランツといえば神託の盾騎士団の主席総長。
たかが一兵卒が根拠もなく罵っているだけなのに疑うのは無理というものです。
彼女自身、ヴァンとリグレットとの会話を耳にしたり超振動実験を行っているのを目撃するまでは、
兄の側にいたいから神託の盾騎士団に入隊したというほど慕い、あんなことをする人間だなどと思いもしなかったでしょうに、
他人に兄を疑えという時には根拠を話さないとはどういうことなのか・・・・・・
本当に兄への疑惑を忠告するつもりだったなら、せめて根拠や経緯や理由を打ち明けて欲しかったですね。
元々の友人か何かならともかく、私はあの旅が彼女との初対面であり、ティアへの信用なども全くなかったのですよ?」
矛先が自分に向いた途端、ジェイドは呆れを込めた口調でティアの隠蔽を責め始める。
ティアが信用できない人間なのも、根拠がなければ容易に信用できなかったのも確かだが、
ジェイドがルークに責任を認めさせる言動がなければピオニーも受け入れたかもしれなかったが、
今のジェイドがそういうのを認められるはずもなく、ピオニーは更に冷えた声音で追及する。
「ならば、ルークも同じようにティアを信用できなかったはずだな?
ルークの場合はヴァンは自国の王である伯父から先遣隊を任されるほどの、両親から剣術師匠を任されるほどの信頼を得ていた人間なのだから尚更だ。
両親が、子どもに、信頼できる人間と示して近付けて、師を任せて、信頼の強力な下地を何重にも作り、
その上で七年もの時間をかけて頼りになる優しい師匠の演技を見せられてきた。
何よりティアはファブレ公爵家を、ルークの屋敷を襲撃し、その際にルークを含む住人に
催眠と痺れの効果とともに譜術に匹敵する威力で攻撃するユリアの譜歌までかけたそうじゃないか。
その上にルークを戦わせたり、見下したり、罵っていたとか。
一兵卒や初対面という以上に、危害を加え横柄な態度の信用できない加害者のいうことを信用できるか?
既に被害者であるルークに対する言動で支離滅裂な思考回路の持ち主だと行動で証明しているというのに?
お前以上に、ルークにとってティアもティアの話も信用できるようなものではなかったはずだ」
恐らくピオニーがその場にいたとしても、ルーク以外の誰であっても、ティアを信用などしないだろう。
もっとも、その場にいたのがルーク以外の人間であれば、言動を信じるか否か以前にさっさと切り捨てるか、
馬鹿なことを言えないように猿轡でもしていたかもしれないが。
「例えば、ケテルブルクにいた頃のお前に同じことが起きたらどうだ?
お前が私塾に通うのではなく、家庭教師に学んでいたとする。
そして家庭教師を狙う暗殺者が、よりにもよって無関係なお前の家を訪問している時に襲撃し、お前を巻き添えにし、譜術で攻撃したとすれば?
挙句襲撃の理由も話さず、お前を戦わせたり、見下したり、罵っていたら?
お前はその相手を信じられるか?根拠も経緯もなく長年の家庭教師を怪しいと言われて信じられるか?
お前たちの中で最もヴァンを信用する理由を持ち、お前たちの中でもっともティアを信用できない理由を持っていたルークですら、
具体的な根拠もなく、疑うに至った経緯も打ち明けることがない“忠告”を信じなかったことは責められるべきなのに、
お前たちはティアの話を信用せずヴァンを警戒しなかったことは責められないのか?
ティアが事前にヴァンを怪しんでいたのを信じなかったことにルークの責任を言うならば、そういうことになるぞ」
ジェイドは眼鏡を直すふりをして不機嫌そうな表情を隠し、不貞腐れた子供のようにやや口を尖らせた。
それ以上追及されるのが嫌なのか振りだと判断したのか退出しようとするのを、
ピオニーはまるで親に叱られた子供が癇癪を起して家出しようとしているかのようだと思いながら、まだ話は終わっていないと冷たい声で呼び止める。
「インゴベルト6世についても同じだ。
マルクトの軍人であるお前はインゴベルト6世を信用するような親交も関係もなかったはずなのに、
幾ら預言に詠まれていると言っても第三王位継承者のルークを障気に包まれたアクゼリュスへ、護衛には剣士とはいえ使用人ひとりを連れただけで、
そして障気から身を護るための対策も、“無知”で外交経験のないのない彼を補佐する者もなく送り出すという、
まるで彼が障気に蝕まれようと構わない、親善大使としての知識を与え支える必要もないかのように扱うことに不審を持たなかったのか?
お前は和平のために赴いたとはいえ先日までの敵国の王の言うことを、不審な点はいくつもあったというのに考えなしに信用して、
騙されて、何も知らず、利用されて、崩落のための『鍵』をアクゼリュスへと言われるままに連れて行き、アクゼリュス崩落の一端を担ったということになる」
直接にルークを操って超振動を発動させたのはヴァンだが、アクゼリュス消滅が預言に詠まれていると知っており、
その預言を実行するためにルークを送ったインゴベルト6世もアクゼリュス崩落には同罪があった。
そして騙して利用したこともヴァンだけではなくインゴベルト6世にも言え、
崩落を起こそうとする犯人に騙されて利用されたのは、ルークだけではなくジェイドも同じだった。
「しかし、アクゼリュス滅亡は、パッセージリングの破壊による大地の崩落が原因です。
この大地が空に浮き、たった数本の柱に支えられているなどと私といえども知らなかったのです。
外郭大地、魔界、パッセージリング、セフィロト・・・・・・そんなものを知っているのはローレライ教団の詠師以上と魔界出身者だけとイオン様からも聞いていますし、
あの時だって事前に知っていたイオン様とティア以外は、誰もが信じられないほど途方もない話と驚愕していました。
譜業や譜術のように知っていることや想像できるものならばともかく、一般人はおろか学者や、
アクゼリュスを領土としていたマルクトの皇帝であるあなたさえ知らず、想像しようもなかったことではありませんか。
そもそも大地が浮いていると知らなければ、大地を崩落させることが可能だなどと想像できるはずもないでしょう。
空が落ちてくるなどと誰も考えないし考える必要がないのと同じぐらいありえないことだったというのに責任を問われても・・・・・・
元はと言えば、外郭大地を左右するセフィロトをたった二つの封咒のみという危うい状態で放置していた
ローレライ教団によるセフィロトの管理体制そのものの杜撰さと、セフィロトの存在自体を私たちに隠蔽していた秘密主義が問題でしょう。
そんな危険なものが存在していたことや、そんな危険な事態が起こり得ると知られていたなら、私だって他にやりようはありました。
・・・・・・せめて、知っていたイオン様やティアには事前に相談して欲しかったですね」
何も知らなかった、知りようもなかった、想像すらしようもなかったことを強調したジェイドの反論も、
ジェイドがルークに責任を認めさせる言動がなければピオニーも受け入れたかもしれなかったが、
やはり今のジェイドがそう言うのを認められるはずもなく、ピオニーは更に冷えた声音で追及する。
「それもまたルークも同じだな。
彼が無知であった故ではなく、俺やお前のように外郭大地の人間であったが故に、ローレライ教団の詠師以上や魔界出身者などではなかったが故に、
この大地が柱に支えられた外郭大地だなどとは知らず、大地の崩落など想像もできなかっただろう。
そんな危険なものが存在していたことや、そんな危険な事態が起こり得るなど一般には知られていなかったのだから」
そう跳ね返されてジェイドはぐっと詰まる。
騙されていても利用されても、そして知りようも、到底想像しようもなかったとしても、責任がある。
その厳しい論法を生まれて七年のルークにはそうと知りつつ散々に当てはめてきたのに、
ルークの五倍生きている大人の自分が当てはめられることは拒否して言い訳ばかりを返すジェイドの子供っぽさにピオニーは呆れて溜息をつく。
ジェイドが子供っぽいことも、また子供のまま大人になれないような性格なの良く分かっていた。
何時までも子供の頃のままでいてくれることに、ケテルブルクの頃のままでいられるような安心感を感じて甘えていることも自覚していた。
ネフリーとサフィールが離れてしまった後は尚更に、唯一側にいる幼馴染にそうあって欲しいと望んですらいた。
けれどジェイドの子供っぽさを心地よく感じるのは幼馴染のピオニーだけ、それもごく私的な話題の時にだけであり、
他の時に子供っぽさを発揮すればどうなるのかということを、迂闊にも失念してしまっていた。
「ところで、先日ヴァン一味が起こした事件の調査報告で聞いたことだが・・・・・・
ヴァンが盗んでワイヨン鏡窟に隠していた、15年前のホド島住民のレプリカ情報も、お前が指示して採取させたものだったそうだな。
レプリカ情報の採取には、被験者に障害が残るなどの悪影響が出ることがあり、最悪の場合は死亡する。
フォミクリー発明者であり研究者であり、そしてその実験に直接参加し指示していたお前はその危険性を熟知し、
お前の行動の結果、多くの人々が、自国の民が死んだり障害を残すことを、事前に想定できていたはずだな。
事後のフォミクリー実験情報を管理にしても、お前は情報をジャスパーが管理していることすら知らず、知ろうともしなかったんだろう?
あいつはそのために上に睨まれて昇進が遅れても、自分の責任として管理を続けていたというのにな。
お前自身が危険性を熟知した上で行った実験の情報管理にすら15年にも亘って無頓着でいるほどの放置っぷりは
口に出さずとも“私は悪くない、責任なんてない、知ったことではない”
“指示した私ではなく、指示を実行した現地の者達のせいだ”と言っているように見えるが」
大きく目を見開き絶句した後、やや顔色を悪くして目を逸らしたジェイドの様子に、
本当に自分の責任を感じてはいなかったと見たピオニーは心底呆れ、胸が悪くなるほどと苛立ちに舌打ちを抑えきれない。
フォミクリーの封印を承諾した後に自分の罪を自覚していると言っていたのは、一体なんだったのだろう。
まさか自覚しているのはフォミクリー発明だけで、それ以外のことは全て自覚していなかったとでも言うのか。
それとも自覚すれば、研究を止めさえすれば、研究で出た犠牲や傷付けた人々のことなど忘れ去ってえる程度のものだったのか。
ジェイドがフォミクリーを発明したのみで、他人を殺傷する方向に使ったのは別人だというのなら、
技術の発明者と悪用者の責任を分離して、技術を悪用された発明者に同情することもできたかもしれないが、
ジェイドは発明者であると同時に自ら軍事転用や兵器開発に直接参加しており、更には自国民への命すら危険に晒す人体実験を指示した人間でもあるのだから、
そのジェイドが発明した罪だけの自覚で済ませるのを認められるはずもなく、技術を悪用された事に同情の余地などあろうはずもなかった。
ジェイドの指令による苛酷な超振動研究の人体実験を受けた被験者のヴァンはティアの実兄であり、
レプリカ情報採取を受けたホド住民の中にはガイの実姉マリィベルもいたというのに、
その二人と共にいても、ジェイドは過去の罪と責任について思い至ることはなかったというのだろうか。
恐らくはヴァンが世界を滅ぼそうとするほど憎むに至った理由のひとつはその過去にあり、
ジェイドはヴァンの動機と密接に関わっていることにもなるというのに。
少しは成長したと、命の重さを僅かでも理解るようになったと思っていたのだが、
それはただの幼馴染の欲目、幻想に過ぎなかったと気付き、同時に親友を甘く見ていた自分自身への幻想にも気付いてピオニーはほとほと情けなくなった。
「・・・・・・そして、お前には既に父上を、考えなしに信用して、騙されて、お前の指令で行った研究の成果を委ねた結果、
利用されて何も知らずとも島二つの崩落の一端を担ったことがあったな。
今まではお前はホドを消滅させる計画建てた父上や、それを実行した現地の者たちと違い、ホドに使うと知らなかったと庇ってきたが・・・・・・
信用しても無理がない相手にであっても騙されるのは愚かだと言うなら、
騙されて何も知らず利用されていても、そして知りようも、到底想像しようもなかったとしても責任があるというなら、
ホド島とフェレス島の消滅すらもお前が悪くないはずはないな」
騙されていても、利用されても、そして知らなかったとしても、例え到底想像できない事態であっても悪くないはずはないのだから。
「お前自身の弁によれば、そういうことになるな?」
先程以上に青褪めさせた顔を振り、私はルークとは違う!と珍しく口調を乱して叫んだジェイドに、
ピオニーは堪った苛立ちを吐き捨てるように、ジェイドとは別の意味で肯定と否定を返す。
「──そうだな。お前とルークとは違う。
ルークは少なくともアクゼリュスの住民を傷付ける気は毛頭なかったが、英雄願望もあったにしろ人を救うつもりだったが、
お前はホドの住民を傷付ける気どころか実際に命すら危うくする気があって人体実験の対象にしたのだし、
ルークは人を救おうとして利用されたが、お前の方は軍事転用した結果であり、少なくとも人が死ぬ結果になる研究だとは分かっていた。
ルークをお前と同列にすれば、ルークに対して酷に過ぎるか」
ジェイドの言い方では自分はルークよりマシだとでも思っているように見えるが、実際の所ジェイドの過去の罪にルークよりマシな点など何ひとつなかった。
ルークとは違いジェイドはフォミクリーの軍事転用と兵器開発と人体実験に直接参加し、人体実験に至っては危険性も人が死ぬのも民間人に使うのも分かっていて、
罪の自覚にしても既に15年以上にも渡って逃避と無自覚を続けていたのだから。
「──信用しても無理がない相手に騙されて、何も知らず、利用されて、そして到底想像できないような事態であっても責任や罪を問うというのはそういうことだ。
15年前にホド島の自国民を障害や死亡の危険性がある研究の実験台にするのを指示し、ホド島とフェレス島の崩落の一端を担い、
そして今度はアクゼリュス崩落の一端を担ったお前は、どうして責任も認めず、結果に無頓着でいる?
そしてこれから、どうやってその罪を背負い償っていくつもりなんだ?」
なあ、ホド崩落の一端を担った“数万人殺し”の大罪人、自国民を死亡や障害を残す恐れのある人体実験の実験台にした狂科学者、
そして15年間その責任から逃避し続けて無自覚なままに過ごしてきた卑怯者?
レプリカ情報採取に死亡や障害を残す危険性があることとホド島のレプリカ情報がジェイドが指示して採取させたものなのはゲーム中のジェイドの台詞、
15年前のヴァンを被験者とした超振動研究がジェイドの指令で行われていたのはエピソードバイブルのヴァン小説、
フォミクリー実験情報をジェイドの元同僚のジャスパーが管理していることと、ジェイドがそれを知らなかったことは漫画「追憶のジェイド」より。
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