※被験者イオン×アリエッタですが、被験者イオンの性格が黒く、ヤンデレてます。
※描写はありませんがアリエッタに対して加虐的表現があります。
カラッポな世界、カラッポな他人、カラッポな僕。
君に会うまで、僕の世界は中も外も何もかもがカラッポだった。
カラッポの中の、たったひとつの
“イオン様!偉大な導師イオン様!”
“導師様、どうか今年の預言を!”
“預言をありがとうございます導師様!”
他人が必要とするのは僕じゃない。導師としての僕だけ。
僕から家族を奪い、僕にこんな生を押し付け、僕の死を詠んだ預言に支えられた信仰と尊敬だけ。
“導師”を取り払った僕をみてくれる人間なんていない、カラッポの僕とカラッポの世界。
ねぇアリエッタ。
僕は君に、導師守護役は取りかえのきく存在だと言ったたけれど、導師も同じなんだよ。
みんな、導師でありさえすれば、僕じゃなくてもいいんだから。
エベノスが死んでも、僕になったように。
・・・・・・きっとそれがレプリカでも。
導師の地位につけて、ダアト式譜術を使えて、惑星預言を詠めれば、僕じゃなく僕と同じ地位と能力を持った別人だっていいんだ。
僕には家族もいない。
物心つく前にに預言に従いダアトに連れてこられてから、僕の周りにいた人間はみんな次の導師としての僕をみる人しかいなかった。
・・・・・・だから僕も、他人を導師を預言を教団を盲信する存在としてしか、みれなかった。
“どうか、アリエッタをイオン様のお側に”
獣に育てられた君の頭の中はカラッポで、預言も何もなかった。
カラッポの頭の中に僕を容れて、カラッポの頭で僕のことを考えてくれた。
ねぇアリエッタ。
君が初めてだったんだよ。君だけだったんだよ。
僕が導師だからでもダアト式譜術を使えるからでも惑星預言を詠めるからでもなく、
僕だから側にいたいといってくれたのは、君だけだったんだよ。
・・・・・・だからこそ、君にはレプリカの“僕”を守らせたくなかった。
カラッポの僕がカラッポの世界のカラッポの人生で手に入れた、たったひとつの僕自身のもの。
それすらも“取りかえのきく”ものになってしまったら、僕にはもう何もなくなる。
またあの、アリエッタに出会う前のカラッポな自分に戻ってしまう。
“どうか、アリエッタをイオン様のお側に”
“おねえちゃん、イオン様守るの!”
だからこの想いだけは、僕にしか向けさせない。
君が僕に、君だけが僕に向けた想いを込めてくれた君の姉の骨と一緒に、持っていく。
取りかえられた新しい“僕”には遺さない。
何も知らない君はきっと嘆き、新しい守護役を恨み、苦しむだろう。
もしかしたらレプリカの“僕”のことも、裏切ったと思って憎むかもしれない。
けれど、それでいいんだ。
君には取りかえられた次の“僕”を守りながら笑うよりも、
取りかえられた“僕”を守れずに、“僕”と僕の違いに泣いていて欲しい。
・・・・・・本当に、度し難いよね。
どちらにしても君が不幸になることは分かってるのに、
君がかわいそうだからと僕の死を隠し、“僕”と僕の入れ替わりを隠し、
けれど君が泣かないために“僕”を守り続けさせようとはしないんだ。
君の想いは僕だけのもの。
これからも君は、僕のことだけを守ろうとしたただひとりの人として想い続け、
それ故に嘆き恨み苦しみ憎みながら生きるんだ。
君を殴っていいのも苦しめていいのも泣かせていいのも、僕だけだから。
「僕の後は、七番目に・・・・・・。
アリエッタは、導師守護役を解任。アリエッタにだけは、レプリカとの入れ替えを、秘密に・・・・・・。
それから・・・・・・アリエッタが持ってきた、ライガの頭骨、を・・・・・・、僕の、墓前に・・・・・・」
花はいらない。
たったひとりの君以外がくれる花なんて、どんなに高価で美しくても、僕には意味なんてないカラッポだからね。
この骨と、これからカラッポの世界で君が僕への想い故に芽吹かせる負の想いの花々が、僕にとって何よりの手向けになる。
さようなら。
カラッポの世界の、カラッポな僕の、たったひとりの人。
「導師の墓・・・・・・ですか?死体はザレッホ火山で焼却するものと思っておりましたが。
遺体から導師の身元が割れでもすれば面倒なことになるでしょう」
「人気のない場所に、墓だと分からぬよう墓石も何も置かなければ問題あるまい」
「まあいいですが・・・・・・意外ですね。
あなたにそんな感傷があったとは。計画のために必要なことでもないでしょうに」
「骨を・・・・・・供えねばならんからな」
「骨?花ではなく?」
「骨だ。・・・・・・あの方の墓に供えるには、これが一番相応しい・・・・・・」
漫画外伝のオリジナルイオン編「失いゆくすべて」設定です。
頭骨はアリエッタの姉ライガのもので、アリエッタが「おねえちゃん、イオン様守るの!」とオリイオにあげ、
オリイオの死後その死体が埋められたと思われる盛土の上にヴァンが置いていました。
「失いゆくすべて」はオリイオの黒さと全てをガラクタと評する虚無感、
「僕のペット(アリエッタ)を殴っていいのは僕だけだ」なアリエッタへのヤンデレ愛が凄まじく度肝を抜かれました。
前導師エベノスも漫画の惑星預言の研究をさせて失敗で大量の死傷者を出した件や小説のナタリア入れ替えの暗躍といい、
滅亡預言隠蔽したともとれるユリアの夫で弟子の二代目導師アルバートといい、
ティアは神託の盾騎士団は秩序を守るローレライの騎士とか言ってましたが、教団関係は黒と黒疑惑満載ですね。
こうなると逆に裏切り者とされているダアトの方も、作りものの汚名で本当は・・・・・・と勘繰りたくなります。
戻る