冷酷者の和平の信用は







イオンたちがコーラル城で整備士長を救出して戻ってきた時、 カイツール軍港には救出を頼んできた整備士たちの姿は見えず、アリエッタの襲撃による混乱だけではない騒ぎに包まれていた。

そして整備士たちを捜す間も騒ぎの理由を聞く間もなく、すぐさまルークはキムラスカ兵に丁重に、イオンたちと引き離そうとするかのように連れて行かれ、 ルークの肩に乗ったままのミュウを除いては誰ひとり、使用人で護衛剣士のはずのガイすらもやはり引き離そうとするかのように同行を許されなかった。

そしてバチカルから来たインゴベルト王の使者だというエーベルヴァイン伯爵は、 ジェイドもティアもアニスもまるで罪人のように捕縛した上に和平の申し込みもダアトの仲介も拒否し、不審がる彼らに理由は彼らへの不信だと告げた。

「あなた方の態度や行動では、到底和平を結びに来られたとは思えません。 我が国もルーク様も、そのお命までも軽んじながらの和平などどうすれば信じられると?」

「なんのことですか。あの思慮がなさ過ぎるお坊ちゃんが愚痴でも吐いたのですか? まったく、世界のことを何も知らないお坊ちゃまの駄々にいちいち付き合わなくても良いでしょうに」

「ルークの言うことなんか取り合わないでください! 彼は世間に疎く礼儀や常識を知らないものですから、つまらないことを大袈裟に悪く言ってるだけに決まっています。 私にも出会った頃から横柄で無神経で、この旅にも文句ばかりで・・・・・・本当に、イオン様とは正反対に人が悪いんだから!」

そうジェイドとティアはキムラスカのカイツール軍港で、キムラスカの貴族やキムラスカの兵士たちの前で、キムラスカの次期国王への侮蔑を公言する。
その態度がキムラスカ人の彼らの目にどう映るのか、後にエーベルヴァインから聞くだろうインゴベルト王やファブレ公爵がどう思うのかを考慮することはなく。

マルクトからは謝罪とジェイド・カーティスの捕縛の許可、そして新たな名代を送る旨が届いてはいるが、 積もり積もったジェイドと、ジェイドを使者に任じた皇帝への不信は、次の名代にも向けられるだろう。
既に次の名代の謁見も叶いそうにないほどの不信をかっているというのに、この男は何処まで和平の障害になれば気が済むのかと エーベルヴァインは呆れ、次の名代にほんの僅かに同情を覚える。

「そんな、僕もジェイドたちもキムラスカやルークを軽んじてなどいません! どうして彼らにこんな酷いことをするのですか。早く縄を解いて解放して下さい!」

エーベルヴァインは元々悪評の多かったジェイドや、ファブレ公爵家襲撃で既に何重にも非常識を晒しているティアの言動には、 思った以上だと感じはしても意外ではなかったが、イオンの言動には驚き、また奇妙にも感じる。
王族の命や意思を軽視したり、部下が王族を罵るのを諌めもしないことがその国の者にどう受け取られるのかを、 マルクトやキムラスカの君主や貴族にもその親族にも会う機会の多い導師が、何も知らないかのような態度をとるとは。
まして命を狙う危険人物の元に要求通りに連れて行ったり、命に関わることを当の本人の意思を無視して決定するなど、個人としても冷酷な振舞いだというのに。
三年前に会った時には年齢に似合わない思慮深さと底知れなさがあったものだが、 今のイオンはまるで年相応、いやもっと幼いただの子供のようでエーベルヴァインには容姿だけ同じの別人のようにすら見えた。

しかもルークはただ国王の親戚のみならず第三王位継承者にして王女の婚約者、実質的な次の国王。
現在のルークが軟禁で他人と接した経験が少なく、記憶障害で7年分の記憶しかないためもあり気付いていないとしても、何時までもそのままではない。
人は変われるし成長もする。特に子供の成長は目覚ましいものがある。
子供の頃は冷酷な仕打ちを受けていると自覚していなくとも、大人になってから思い返して自覚し、相手に怨恨や不信を持つのは良くある話だ。
何れルークが軟禁から解放され次期国王として政治に関わるようになった時、あるいは王位についた時になって過去を思い返し、 ダアトやイオン、マルクトやピオニー9世に対して不信感や敵意を持つようになれば、キムラスカとマルクトやダアトの関係にも影響する。
先王の時代には友好的な関係を築いていても、代替わりすれば新王によって和平が破られたり戦争が起こるというのも、両国の歴史の中で幾度もあったことだ。
仮にインゴベルト王が和平を結んだとしても、ルーク王の代になって決裂する危険を孕むものになってしまうのに。

目的のための冷酷さならば良し悪しは別として目的と行動は一致するが、和平を申し込む、仲介をする目的と、その国の王族に冷酷に振舞うのは目的と行動が正反対だ。
彼らの行動は和平を結ぶ気も、和平を長続きさせる気も感じられないものにしか見えなかった。

「導師イオン。ここは既にキムラスカなのですよ。 キムラスカで起きた軍港襲撃と誘拐への対処を、ダアトの導師であるあなたが勝手に決められるとお思いですか。 何故アルマンダイン伯爵に何の相談もなく無断でコーラル城へ向かわれたのですか?」

「それは、整備士長の命を助けるために・・・」

「襲撃されたのは我が国の軍港、誘拐されたのは軍港の整備士長、占拠されているのは我が国の公爵家の城、 そして我が国の王族であり公爵子息のルーク様の御身も要求され、とてもあなたが対処を決められる事態ではありません。 このような大事ならば国王陛下のご判断を仰ぐのが道理でしょう。 あなたの為さりようではキムラスカで起きた王族の命に関わる大事であっても、 国王陛下にも軍港の責任者にも無断で、王族の命すら左右できるとでも勘違いされているようにしか見えませんが」

既に整備士長の救出を頼んだ整備士たちも捕縛されている。
上司を助けたい一心だったのだろうが、アルマンダイン伯爵に無断で救出を要人に頼み、危険に晒す様な真似をした彼らも重い処罰を受けるだろう。

「それにあなた方は、チーグルの仔以外は誰ひとりとして、 身柄を要求されている当事者の一人であり、次期国王であられるルーク様に全く意見を求めずにアリエッタらの元に行くと決め、 導師は同行を拒否したルーク様に“アリエッタはあなたにも来るように言っていましたよ”と非難するように言われたそうですね。 キムラスカの王族はダアトの六神将が来いと言ったら命を狙われていても行くべきだとでも?」

そう責められてイオンはコーラル城に向かう前の会話を思い出し、自分も、ジェイドも、ティアもアニスもガイもルークの意見を求めていなかったことに思い至った。
ルークの命を狙っている敵の所に行くのに、ミュウ以外は誰ひとり、行けば殺されるかもしれないルークの意見を求めていなかった。
ルークの命に関わることなのに、ルークの気持ちなど頓着しなかった。
キムラスカへの和平の使者のジェイドも、その仲介のイオン自身も、護衛剣士で友人のガイも、ルークを屋敷まで送ると言っていたティアも、 まるでルークの命すらも自分たちが勝手に左右していいもののように扱っていた。

イオンは被験者イオンが可愛がっていた元導師守護役のアリエッタを甘く見ていたが、キムラスカ人から見ればアリエッタは軍港襲撃犯に過ぎない。
そして他人から見れば自分たちの行動は殺人犯に命を狙われている人間を要求通り殺人犯の元に連れていき、 しかも命を狙われている人間の意見など聞きもせずに決めたという、ルークの心も命も軽視した冷酷な振舞いに他ならなかった。

他人の目から見た自分たちの行動をようやく考慮して愕然となったイオンは、そんな自分から逃れようとするかのように必死に悲鳴の様に叫ぶ。

「僕は!僕はただ、アリエッタを止めようとしただけです、整備士長を助けるために!」

しかし今にも泣き出しそうなその様子にもエーベルヴァインは冷厳な態度を崩すことはない。
何も知らなければ同情心を煽られるような様子だが、今までの彼の冷酷な言動を知れば表面的な優しさや弱弱しさなど同情も信用も湧かなかった。

「止めるにしても整備士長を助けるにしても、国王陛下や軍港の責任者に無断で行動したり、犯人の要求に従い要人を連れて行く必要がどこにあるのですか。 こういう場合にとるべき対処は犯人を説得し降伏を促すか、軍や特殊部隊が突入して犯人を制圧し人質を救出するかです。 軍港襲撃犯と戦うこともなく言うなりになってしまえば、キムラスカにはその力もないと侮られ、 襲撃犯の要求に従った汚点を残し、同じように要求を呑ませる為に模倣誘拐が起こる恐れもあります。 それも命を狙われている人間を言われるままに連れて行くなど、代わりにルーク様は殺されても構わなかったと? 妖獣のアリエッタに慕われている貴方は捕まっても殺されることはなかったでしょうが、 ルーク様は妖獣のアリエッタに殺すと宣言され、鮮血のアッシュには入り口で斬りかかられたとか。 犯人の両方に狙われているのが明らかなのに連れて行くなど、導師がルーク様のお命を軽視されている意外にどう解釈できると言われるのです。 その整備士長の命にしても、私情で軍港を襲撃し多数の兵士を殺傷したような者らの言うこと。例え要求を飲んでも無事に人質を返すかなど怪しいというのに」

「そんな大袈裟な!ルーク様のことは護衛剣士の俺がちゃんと護って助けてやっていました。 現にちゃんと無事に帰ってきたのに、そんなに責めなくても良いじゃないですか」

そう笑ってイオンを庇おうと進みでたガイは、そのままジョゼット・セシル将軍に胸倉を掴まれ乱暴に引き倒されたかと思うと、抗議も抵抗もする間もなく縄をかけられる。

どうして従姉に、彼女は知らなくても自分はそうと知った時から好意と親近感を抱いていたのにこんなことをされるのかと、 裏切られたような気分になったガイはジョゼットを不満そうに睨むが、 ジョゼットは不満などと生易しいものではない激しい怒りを浮かべた目で、ガイが痛みすら錯覚するほどに強く睨み返す。

「貴様はとうに護衛剣士も使用人も首だ。 ファブレ公爵からはお前を捕縛して連行するよう命令が下されている。 護衛すべき主人をその命を狙う者の元に連れて行ったくせに護衛剣士などとよくも臆面もなく名乗れるな、この恥知らずが!貴様のせいで・・・・・・!!」

ジョゼットはガイへの憎悪を抑えきれずにそう言いかけると唇を噛み、言い訳しようとするガイにきつく猿轡を噛ませ、息苦しそうにしても緩めることもしなかった。

ジョゼットはこの騒ぎでガイの姓を知り、今まではファブレ公爵家の数多い使用人のひとりと気にしたこともなかったガイの容姿が自分の親戚と似ていることに気付いたが、 従姉と気付いて好意を持ったガイとは異なり、ジョゼットは親戚かもしれないと気付いても好意など欠片も湧かなかった。

もしやファブレ公爵の手にかかった叔母に深い縁のものかと復讐を疑いもしたが、この様子では本当に ルークの命を危険に晒したことも、その意思を無視して行くのを決めたことも、何も悪くないと思い込んでのただの愚行だったらしい。

コーラル城で調べたいことがあるなどとぬかしていたそうだが、屋敷から犯罪に巻き込まれて飛ばされた公爵子息を護衛し連れ帰る仕事の最中に、 自分の私情のために勝手に行動し、あまつさえ公爵家が所有する城に公爵家の人間の許しなく立ち入り調べるつもりだったというのも愚か過ぎる。
軍人や貴族の使用人でなくとも、仕事中に仕事を放棄して私事に走るなどと首になって当然だ。
命じられているのは捕縛のみで処刑ではなく、私情は抑えなければならないと分かってはいても斬りかかりそうだった。

もしもガイがセシル家の縁の者であれば、王族の護衛剣士でありながら 護衛対象を殺害予告した軍港襲撃犯の元に連れて行った愚か者がセシル家の縁の者ということになり、ジョゼットも連座するかもしれず、 例え連座を免れても、ファブレ公爵子息を危険に晒した者の親族となればファブレ公爵の後見は失うだろう。
愛人という私的な立場も、公爵からも今までは夫とジョゼットとの関係を容認していたシュザンヌ夫人からも、 息子を危険に晒したガイの親戚として忌避され失うかもしれない。

セシル家は既にジョゼットの叔母ユージェニーの裏切りで爵位を失い、売国奴を出した家として蔑まれる没落貴族だというのに、 この上公爵子息、次期国王の命を危険に晒した人間を出せばますます蔑みに拍車がかかり、再興も今にも増して困難になるだろう。
ファブレ公爵の庶子を、次期国王になるルークの異母弟を産むことができれば、 その子の代にはセシル家の再興が叶うかもしれないと望みをかけていたジョゼットは、 結婚を諦めて複雑な感情を持つ相手の愛人にまでなって家の再興を志してきた努力が水泡に帰すのを思うと、 未だ何が問題だったのか自覚せずもごもごと言い訳しようとしている見苦しい姿を、例え親戚だろうとこの手で叩き斬ってしまいたかった。

「妖獣のアリエッタと、アリエッタに頼んだという鮮血のアッシュ。 少なくとも六神将のうち二人がいることは要求の時に分かっていたはずです。 またマルクトでのタルタロス襲撃などでも彼らと他の六神将が共に行動していた以上、今回もその可能性は十分に考えられ、 事実もう二人の六神将烈風のシンクと死神ディスト、それにアリエッタの配下の魔物も多数居たそうですね。 一方そちらは、封印術をかけられ弱体化しているというジェイド・カーティス、 護衛剣士とはいっても軍人でもないガイ・セシル、軍人とはいっても響長に過ぎないティア・グランツ。 しかもティア・グランツはファブレ公爵家を襲撃し、ルーク様に攻撃譜歌で危害を加えた前科があり、ルーク様の護衛としては到底当てにできない。 ──おや、ご存じなかったのですか? 彼女はファブレ公爵家を襲撃し、ルーク様やファブレ公爵夫人、 警備の白光騎士、メイドや使用人など多くの人々に攻撃力を持つ眠りの譜歌で危害を加えた犯罪者ですよ」

そう言うとエーベルヴァインは巻き込むつもりも危害を加えるつもりはなかったと喚くティアを嘲笑し、 先程ティアがルークに、自分が襲撃し攻撃した被害者に向けた言葉を返した。

「よほど“世間に疎く、礼儀や常識を知らない”ようですな。 屋敷を襲撃することも警備を眠らせて無防備にすることも、 あまつさえ音律士クルーナーでありながら、 被害者の話では眠りの効果に加えて下級譜術並の威力を感じたという攻撃力のある譜歌をかけることを、 巻き込むこととも危害を加えることとも認識せず、挙句に自分の犯罪や態度は棚上げに被害者の態度に文句をつけるとはね」

また喚こうとしたティアが乱暴に猿轡をかけられるのを見ても、もうイオンは庇うことはしなかった。
今まではルークのティアへの態度を横柄なものと思っていたけれど、何も知らなければ今猿轡をかけられていることも酷いと庇っただろうけれど、 ティアの横柄で冷酷な犯罪と、そうした行動を他人がどう見ているのかを知った今のイオンは、 やっとティアを庇うことがキムラスカとダアトの関係にどう影響するのかを考えるようになっていた。
何よりティアがルークにした行いを知ってしまえば、その上でティアの態度を良く思い返せば、そちらの方がよほどに酷く横柄で、もう庇いたいとすら思えなかった。

「それから、導師守護役のアニス・タトリン。 彼女にはマルクトから、タルタロス襲撃や六神将の襲撃を手引きしたスパイと発覚したと知らせがありましてね。 つまりは我が国にとっても、ルーク様への襲撃を手引きしたスパイということです。 それを除いても導師守護役の彼女は、ルーク様の護衛には数えられませんが」

その言葉にイオンははっとして、ティアたちとは違い捕らわれる心当たりがあるかのように顔色を青くして沈黙していたアニスを見る。
アニスは猿轡はかけられていなかったが、震える唇からは何の言葉も紡がれず、ただイオンとジェイドから目を逸らして俯くだけだった。

「この人数、このメンバーでルーク様を御護りしながら複数の六神将、更にはその配下の魔物や神託の盾兵と戦い、ルーク様を危険に晒すことなく戻って来れると思われたのですか? まして既にタルタロス襲撃で、ジェイド・カーティスが万全の状態で100人を超える兵士がいても敗れていたというのに。 どうして、せめてアルマンダイン将軍に相談しても下さらなかったのです。 仮にルーク様と共に向かうとしても、残った兵士が同行して戦力を増強することも可能だったはずでしょう。 実際にはルーク様はアリエッタの配下の魔物に攫われ、他の六神将の手中に置かれてしまった。 もしもその時に危害を加えられていたら、予告通りに殺されていたら?」

そう言いながらエーベルヴァインは、ルークが中で医者の診察を受けているだろう建物の方を心配そうに見て眉を寄せる。

本当にルークが危害を加えられていないかどうかも、今の時点では不安が残っている。
コーラル城ではフォミクリーの機械が発見され、ルークはその中に寝かされていたと言う。
フォミクリーは情報を抜くだけでも被験者に障害などの悪影響が出る恐れがあり、最悪の場合は死亡する。
もしもルークがレプリカ情報採取など何らかの実験をされれていたとすれば、今後ルークの体調が変化する恐れがあり、 しなくともレプリカ情報の抜き取りがあった事実だけでも確認されれば、障害や死亡の恐れのある危険な実験を行われたことで、 死ぬ危険があると分かっていて連れて行った者の責任もキムラスカの敵対感情も更に重いものになるだろう。

「口で幾ら和平を唱えようと、あなた方の行動がそれを裏切っている。 我が国の王族に横柄な態度をとり、横柄な態度を繰り返す部下を放置し、我が国の軍港を襲撃し兵士を殺傷し城を占拠した者たちの所へ、彼らに直前に殺されかけ殺害を予告された王族を、 軍港の責任者にも国王陛下にも、あろうことか狙われている王族本人にすら相談もなく、言われるままに行くことを決める。 同行しているマルクト皇帝名代はそれを“どちらでも良い”と・・・・・・ つまり、王族であり和平に協力しているルーク様の御身がどうなろうと構わない、と公言する」

冷たい口調で自分の行いを繰り返され、ジェイドはようやく己の興味がないものを放置してきた態度が他人の眼にどう映るか理解する。
ジェイドにとっては“世間知らずのお坊ちゃん”はどんな身分でも蔑んで良い相手だろうと、命にも感情にも興味がなかろうと、 ジェイドの価値観は他人には、キムラスカ人には共通の価値観ではない。
マルクト皇帝の名代のジェイドがキムラスカの公爵子息であり王族のルークを蔑ろにすれば、 他人からはジェイドの失態に留まらずマルクト皇帝の名代がキムラスカ王族を蔑ろにしたと映り、延いては皇帝と和平への不信になってしまう。
そしてキムラスカの国王であり、ルークの伯父のインゴベルト王から見れば。


「これでどうすれば和平を信じられると言われるのですか?」

他人を、他国を、ルークを軽視し、その命も心も無視し、冷酷な扱いをし続けてきた彼らの態度。
それが他人の目にどう映り、どう思われるのかを考慮しなかった、彼らの思慮のない振舞いが招いたのが、この結果だった。













セシル将軍の思考が打算的ですが、ファブレ公爵に恋愛感情はないようでしたし、 国王など有力者の愛人になった女性の親族や間に産まれた庶子が取り立てられるのは結構あったことなので、 貴族の娘として家のために利益になる相手と縁を結ぶのは、政略結婚同様に選択肢のひとつだったのかなと。
ガイが公爵子息暗殺や、未遂でも計画していた犯人として捕まって身元がばれたら、従姉のセシル将軍やセシル家の立場に関わると思うのですが、 母親の祖国で母方の身内が危うくなるような暗殺を企んでいるのに母親の姓を名乗っていたガイって一体・・・・・・。
マリィベルに似ているセシル将軍に幸せになって欲しいような台詞がありましたが、十年以上セシル将軍とその実家に不幸フラグ立てまくっていたのはガイ自身では。

江戸時代の日本でイギリス船にオランダ人商館員を人質にとられ物資や食糧を要求された時、日本側は当初船の攻撃を考え、 平和に慣れて軍備を減らしていたためにできず要求に従い逃げられた後には、関係者は自害したり切腹、閉門処分を受けました。
戦時に捕虜を身代金で取り戻すのや捕虜交換ならともかく、自国内で、自国の城を占拠されて、テロ行為と脅迫に、それも軍港が要求に応じて、 要求通り命を狙われている人間を、それも次期国王すら連れて行ったというのは、相当に侮られる理由であり国辱ではないかと。

要求が金や物資ならまだ人質の身の安全のために応じることもありますし、人質の身代わりに誰かが犯人の元に行くこともありますが、 犯人に親の仇として殺人予告をされた連れていけば殺される可能性濃厚な人間を要求通りに連れて行くのは危険過ぎますし、 それこそ狙われている人間の命に無神経と思われて和平危うくなりそうです。




                        
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