笑う共犯者







自室の模様変えをしていたルークは、棚を動かした時に古い絵画が棚と壁の間に落ちているのを発見した。
どうやら壁に飾ったあったものが紐が切れて落ち、下にあった棚の後ろに滑り落ちて隠れずっとそのままになっていたらしい。
記憶では、最後に見たのはティアが襲撃してきた日の朝だった。
再びこの部屋に戻ってきたのは二ヶ月半後、次の日には再び旅立ったから絵が消えていたことには気付かなかった。

自分が好きだった人たちといる風景を切り取った絵だというのに、全てを知った今のルークにはその絵を見て沸いてくる感情は暗いものしかなかった。


その絵はまだルークが軟禁されていた頃に、公爵家お抱えの絵師に描かせたものだった。
会えない時の寂しさを紛らわすためにヴァンと自分の姿を映したものが欲しかったから。

絵の中には稽古をしているヴァンとルークと、そしてもう一人。
ベンチに座って二人を眺めるガイの姿も描かれていた。


絵の中のガイは、笑っていた。

ヴァンとルークを見ながら。

騙している詐欺師と騙されている子供を見ながら。

自分が協力して騙されている“親友”を見ながら見捨てながら、楽しそうに笑っていた。


笑っていた。


あの頃のガイが自分に全く友情を感じていなかったとまでは、ルークも思わない。
思いたくないだけかもしれないけれど。
けれど、少なくともガイは騙されているルークをみて笑っていた、笑えたのだ。
助けようともせず、罪悪感に見るのが辛くなることも笑えなくなることもなく、とても楽しそうに笑っていられた。

皆無ではないにしても、所詮はその程度の友情だった。
それを親友だと思うことは、もうルークにはできなった。


ルークは溜息をひとつつくと、不要な品を入れる箱の中にその絵を放りこんだ。
こんな風にガイの笑顔をみる度に沸いてくる疑念も怒りも恨みも恐怖も捨ててしまえればよかったのに。


あれからどれだけ年月が立っても、ルークはそれを捨てられない。















                        
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