nightmare







あんまり幻滅させないでくれ、そう言い捨ててルークを置き去りに立ち去ったガイの足を、誰かが掴んだ。

ルーク、いい加減にしろお前は少しひとりで頭を冷やすことが必要なんだ──そう言いかけたガイの目に、少し離れた、けれど到底手が届き様にない距離で変わらず蹲っているルークが映る。

ルークでないなら一体誰の、と思って下に向くとアクゼリュス崩落で亡くなった、確かジョンとかいう名の幼い男の子がガイの足を掴んでいた。
生きていたのか、良かった、そう男の子を助け起こそうとして、ガイは気付く。

──あの子は崩落したアクゼリュスで泥の海に沈んでいったのに、どうしてタルタロスの中にいるんだ?


その疑念と恐怖に止まってしまったガイの手が伸びてきたジョンの手に掴まれ、とっさに振り解こうとしたが、子供とは思えない力で解くこともできずぎしぎしと骨が軋むほどに締めあげられていく。

やめろ、はなせ、どうして俺を、そう喚いたガイの目を闇色の大きな目が覗き込み、血のついた真っ赤に唇が開いた。


──オマエモキョウハンシャノクセニ



──オマエモアノヴァントイウオトコニキョウリョクシタクセニ

ジョンの声に重なるように後ろから響いたもうひとつの声に振り向くと、ジョンの父親が、鉱夫が、看護人が、 アクゼリュスで死んだはずの人々が血や泥にまみれた傷や潰れた箇所だらの身体でガイに近寄り、足を掴み、手を掴み、身体に纏わりついてくる。


──オマエモキョウハンシャ


──オマエモイチマンニンゴロシ


──オマエモワタシタチヲコロシタヒトリ

──アノアカイカミノコドモトオナジ


やめろはなせ俺は違う、ルークとは違う──そう言いながら必死に振り解いて逃げ出したガイの前に、いつの間にかルークが立っていた。


「同じはずなのに、どうして全て 人の俺だけのせいにして自分の非を認めずに逃げるんだ?」


なぁガイ、お前も俺と同じだったのにな。


失望を滲ませたルークの声に射抜かれたように凍りついたガイの耳に、すぐ後ろで無数の這いずる様な音と呻き声が響いた瞬間、意識は闇に呑まれて消えていった。












nightmare・・・・・・悪夢




                        
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