「あらあらあらアニスちゃん!怖いおじさんたちに、酷いことされなかった?」

酷いことをされるかもしれないと思うなら、どうして止めてはくれなかったの?







未必の故意による無情証明







パパとママは何時も何時も騙されて、他人のために家のお金を使ってばかりで、私が止めても何も聞いてくれなかった。

こんな貧民街では親の借金のために子供が売り飛ばされるのは良く聞く話で、私も借金取りからそう仄めかされたことは何度もあったし、こき使われたり男の相手をさせられる夢をみては飛び起きて、震えが止まらない自分の体を抱きしめて泣いた夜も一度や二度じゃない。
それでもパパとママを恨めなかったし、もしも本当に売り飛ばされてもパパとママを恨むことはしなかっただろう。

だってパパとママは何も分かってないんだから。

私を売り飛ばすつもりなんてないんだから。

パパとママは私を愛してくれているんだから。

だから幾度パパとママのせいで恐ろしい思いをしても憎み切れなかった。


「あらあらあらアニスちゃん!怖いおじさんたちに、酷いことされなかった?」


でも、パパとママは知ってたんだね。

借金をすることで、 怖いおじさんたち借金取りが私に酷いことをするかもしれないと知っていた。

私が怖い人たちに酷いことをされるかもしれないと知っているのに、パパとママは他人のために施しと借金をし続けていた。

酷いことをされるかもしれない私よりも、施しと借金で助かるかもしれない見ず知らずの他人を選んだんだ。

パパとママは、知っていて他人のために私を見捨てたんだ。


パパとママは、私のことを愛してなんかなかったんだね。














                        
戻る