Accomplice







久しぶりね、ガイ。
いいえ、もうガルディオス伯爵でしたわね。
・・・・・・あら、昔のようにガイと呼んでもいいのかしら?
ありがとう。じゃあお言葉に甘えてそうさせて貰うわね。

私も、今は昔のように伯爵ではなくガイとしてのあなたと話したいのよ。

・・・・・・アッシュが帰ってきて、もう一カ月になるのね。
・・・・・・私の体調?
ええ、もう大丈夫よ。
やらなくてはならないことが沢山あるのだもの。
寝込んでなどいられないわ。

ねぇガイ。私はあなたに感謝していたわ。
夫はあのとおりルークに冷たくて、私は体が弱くてあの子に構ってあげられなかった。
あなたがあの子の友達になってくれたこと、本当に感謝していたのよ。


・・・・・・でも、あなたはあの子を裏切っていたのね。


何が違うの?
あなたは知っていたんでしょう。
ヴァンがあの子を騙していることを知りながら、騙されているあの子を助けなかった。
あの子の親友の顔をして、ずっとあの子を裏切っていた。
ヴァンと一緒になってあの子を騙していたのに、騙されたことを愚かだと切り捨てた。

私はあなたを許せなかった。
でも、あなたを殺せばルークは、あの優しい子はきっと悲しむから、だから我慢していたわ。
あの子が帰ってきた時に悲しまないように、ずっと我慢していた。
──でも、あの子はもう帰ってこない。
あなたを殺しても悲しまない。
だから、もう我慢することは止めたのよ。

ああ、やっと薬が効いてきたみたいね。
馬鹿ねぇ。この屋敷で出されたお茶を疑いもせず飲むなんて。
私を騙し、私の息子を騙し、この屋敷の人間みんなを騙しておきながら、自分が私たちから悪意を殺意を受けることがないと思っていたのかしら?

ねえガイ、ラムダスやメイドたちのあなたを見る目が変わったのに気付いていたかしら?
ガルディオス家の子息がキムラスカのファブレ公爵家で使用人をしていた目的なんて誰にだってわかる。
あなたは自分ではルークの親友、メイドたちの同僚面をしていたけれど、私たちからみれば例え実際にしなかったとしてもルークを殺そうとした暗殺者、そしてあの忌むべき大罪人ヴァン・グランツの共犯者なのよ。

あなたの存在がマルクトにとっても厄介者だって気付いていたかしら?
キムラスカの王位継承者を殺そうとしていた前科のある伯爵なんてね、マルクトとキムラスカの和平の障害、マルクトにとって有害なのよ。

あなたがルークを狙っていた動機、もっとも憎むべき仇の息子だからという理由はピオニー陛下にも当てはまることに気付いていたかしら?
ホドを見捨てて崩落させたのはピオニー陛下の父上カール五世、ピオニー陛下は仇の息子、みんな、あなたがルークにしたのと同じようにピオニー陛下のお命も狙うのではないか、忠臣面して騙そうとするのではないかと疑っているのよ。
だってあなたは育てたルークに絆されたから──それも裏切り続けた程度のものだったけれど──復讐を躊躇っていただけで、仇の家族に復讐することが間違っていると考えを改めたわけではないものね。
だからいつまた同じことをするか分からないじゃない?
一度失った信頼はね?簡単には取り戻すことはできないのよ。

キムラスカから憎悪を買い、マルクトから不信を買った、いつ暗殺者に変わるかもしれない前科者のあなたの身を引き渡させるのは簡単だったわ。
ピオニー陛下は父親のことであなたに罪悪感があったようだけれど、せっかく結ばれた和平に罅を入れてまであなたを庇うほど愚かではなかったようね。
あなたをあっさり貴族として迎え入れたと聞いた時には、賢帝の噂もアテにはならないと思ったものだけれど。
それとも危害が自分の身にまで及ぶとなったら流石に見過ごせなかったのかしら?

どちらにしろ、あなたはマルクトから見捨てられたのよ。
この屋敷であなたがどうなろうと誰も構うことはない。
──信じていた相手から見捨てられたあの子の気持ちが少しは分かったかしら。
でもあの子の苦しみはきっとこんなものではなかった。
これからあなたが味わう苦痛もきっと、あの子が味わったものには足りないのでしょうね。












Accomplice・・・・・・共犯者




                        
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